当ブログは禁酒、断酒がテーマ。
ですので「健康的に飲む」という内容の本を取り扱うのはブログテーマから逆行しているような気がします。
ですが今回紹介する書籍は肝臓専門医の監修のもと医学的根拠に基づいて執筆されており、飲酒による害、酒害についての基礎的な知識を学ぶことができる内容となっております。
なのでお酒をやめる人、やめない人に関わらず、お酒との距離感を改めたいとお考えの方全てに役立つ内容と言えるでしょう。
私自身はお酒をやめて、(いわゆる完全断酒)3年を越えており、これから先も飲酒をしようとは全く思いません。ですがこの本に書かれている内容は、もとより知っていたお酒に関するデメリットをはじめ、これまで知らなかった新情報を含め分かりやすくて面白い内容の本です。
この本の読後感であなたが節酒タイプか、断酒タイプかの判断材料になると思いますよ。
覆される「Jカーブ効果」と酒害の真実
「少しぐらい飲んだほうがかえって健康にいいんだよ」
などという世迷いごとを鵜呑みにして、酒をがぶ飲みしていた愚か者はどこのドイツだい?
アタシだよ!!
そしてこれは医学的にも証明されている!などとは一昔前によく聞いた話。
はい、そうですね。みなさんも当然ご存知のいわゆる「Jカーブ効果」ですね。
「Jカーブ効果」とは1日当たりのアルコール摂取量が男性では10~19g、女性では9g程度だと、相対的な死亡リスクが下がり、それ以上だと摂取量が増えるに従って死亡リスクが上がるという、酒好きには「有名な」理論です。
それを示すグラフの軌跡がアルファベットの「J」の形を示しているためそう呼ばれています。
理屈としては心疾患、脳梗塞などの血管に関連した病気については、少しお酒を飲んだほうが良い影響があるためとされています。
しかし、最近になって非飲酒者に比べ心血管疾患のリスクが低くなる飲酒量は存在せず、飲酒量が増えるに従って心血管疾患のリスクは指数感的に上昇することが示唆されました。
つまり健康への悪影響を最小化するアルコール摂取量はゼロが最も好ましいということです。
ゼロの執行人!
これは2018年に世界的権威のある医学雑誌「Lancet」の研究発表によるものです。
1990年〜2016年に195の国と地域におけるアルコールの消費量とアルコールに起因する死亡などの関係について分析したもので、健康への悪影響を最小化するアルコールの消費レベルは『ゼロ』であると結論づけています。
あ…あくまでも、数ある論文の一つなんだからねっ!!
しかもこれは欧米人など比較的アルコールに強い人種などを含めた総合的評価。
多くの日本人はアルコールがもつ毒性に脆弱であることがわかっています。
アルコールは飲むと胃や小腸で吸収され、肝臓で分解されますよね。
分解されたアルコールは「アセトアルデヒド」に変換されます。
でたっ!
このアセトアルデヒドは強い毒性を持っており、発がん性が疑われている物質。
アセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素によって無害な酢酸へと変換されるのですが、日本人はこのアルデヒド脱水素酵素の働きが他人種に比べて弱いのです。
よってアルコールによる健康被害において日本人は他の国の人よりも注意が必要と言えます。
よしんば、「Jカーブ効果」が本当だったとしても、「健康にいい」純アルコール摂取量が10~19gって…。
何かの罰ゲームですか?
これは500ml缶ビール1本分相当ですが、それだけ飲んであとは「ハイお終い!」って言えるような人は間違いなく当ブログを読んではいないでしょうね…。
飲んでねーのと変わんねーや
「ほどほど」の飲酒でも食道がんのリスクは1.45倍!!
さて、欺瞞に満ちた「Jカーブ効果」があえなく撃沈されたところで、いわゆる「適量の飲酒」によるがんのリスクに関して考察していきましょう。
…聞きたくないです
お酒の飲み過ぎが、がんのリスクを上げるのは周知の事実。
飲酒によってリスクが上がるとされているのはざっと、肝臓がん、食道がん、大腸がん、乳がんなど。
2019年に東京大学から、日本人を対象にした「低〜中程度の飲酒のがんへの発表」と題した論文が発表されました。
がーん!!
つまり日本人においては、たとえ少量の飲酒でも、がんのリスクになると報告されています。
あァァァんまりだァァアァ!
この研究では、純アルコールにして23g(日本酒1合相当)を1単位として、1日の平均飲酒量(単位)を飲酒期間(年数)飲酒指数(drink-year)と定義しています。
例えば、1日当たり日本酒1合の飲酒を10年間続けたら「10drink-year」ということ。
ビールのロング缶1本と大体同じだね
1日当たり2合の飲酒を10年間続けたら「20drink-year」で、
またそれを20年間続けたら「40drink-year」という計算です。
な…なんだ、消費税以下か
これは10年で1.05倍ですので、20年、30年と飲み続ければ、当然リスクは上がっていきます。
つまり30年で1.15倍(15%)で、これが1日2合(20drink-year)だと1.3倍(30%)になる計算ですね。
ただ、がんと言っても様々ながんがあります。肺がん、胃がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がんなどなど。
飲酒によってなりやすいがん、なりにくいがんがあるのは容易に想像できます。
飲酒によって最も罹患率の高いがんは「食道がん」。
そのリスクは、「適正飲酒」である純アルコール1日23gの飲酒を10年続けた場合(10drink-year)、1.45倍になるとのこと。
つまり、模範囚のような慎ましい飲酒生活をしていても、食道がんのリスクは45%もアップするのです。
つまり1日46g、500ml缶ビール2本相当を10年(20drink-year)で90%、2倍弱という計算。
また、口唇、口腔及び咽頭がんも1.10倍という結果になっています。
そのほか器官と咽頭をつなぐ期間である喉頭のリスクも1.22倍と高くなっており、とりわけ「お酒の通り道」になる部位ががんになりやすいのです。
飲酒量がこれより多く、飲酒期間が長くなればその分、罹患率は高くなるのです。
また、胃がん(1.06倍)、大腸がん(1.08倍)なども、がん全体と比べてリスクが若干高くなっていますね。
女性がかかりやすい乳がんもリスクが1.08倍高くなっています。このほか、子宮頸がん(1.12倍)、前立腺がん(1.07倍)などもリスクは高めとなっています。
ぎゃふん
アルコールで免疫力が下がるエビデンス
「飲酒によって免疫が下がる」お酒好きなら誰でも一度は耳にしたことのある、このフレーズ。
免疫とは病気を意味する「疫」から「免れる」と書きますよね。
つまり私たちの身体に備わっている防衛機能。この機能のお陰で、体の中に悪い細菌が入ってきても、警備員よろしくガードしてくれるのです。
免疫力については、2020年に世界的パンデミックを引き起こしたコロナ禍以降、多くの方が過敏になっている問題とも言えるでしょう。
中でも最悪なのがウォッカなどの度数の高いお酒。
度数の高いアルコールは喉を通る際、喉の粘膜を傷つける可能性が高く、粘膜の損傷は免疫力の低下を招きます。
免疫による防御反応には3段階あり、
「自然バリア」と呼ばれる第1段階、
「自然免疫」と呼ばれる第2段階、
「獲得免疫」と呼ばれる第3段階です。
第1段階の自然バリアは皮膚や粘膜などが病原体の侵入を防ぎます。
そして、それらを突破されても第2段階である自然免疫で、マクロファージなどの食細胞が病原体を食べて退治します。
それでも退治できない場合は第3段階の獲得免疫で、侵入した病原体に適した攻撃を繰り出して撃退するのです。
第1段階『自然バリア』
第1段階の『自然バリア』は、体のさまざまな箇所にあり、大きく3つに分類されます。
1つは涙、汗、唾液、尿などの「物理的障壁」です。
また目には見えませんが、腸管にある絨毛、気道にある線毛もまた、体内へ侵入しようとする病原体を外へと押し出す運動を常にしています。風邪をひいて痰が出るのは、線毛の働きによるもの。
2つ目のバリアは「化学的障壁」です。
胃酸などの粘液に含まれる酵素や酸性物質、皮脂に含まれる脂肪酸や乳酸、また体の表面に存在する抗菌ペプチドがこれに当たります。
3つ目は「微生物学的障壁」。
これは、皮膚や腸などに存在する常在菌を指します。これら3つの機能が自然バリアとしてウイルスなどの病原体の侵入を防ぎます。
ドラクエのルカニやね
第2段階『自然免疫』
第2段階目の防御機能は『自然免疫』。
侵入してきた病原体をマクロファージと呼ばれる食細胞が、病原体を取り込んで死滅させます。
また、サイトカインと呼ばれる物質を放出し、血管内から好中球(白血球の1種)などの援軍が呼ばれ、これらの働きにより各々の部位に炎症が起きます。この炎症反応によって病原体が弱るのです。
インフルエンザや風邪で引き起こされる諸症状(熱、鼻詰まり、喉の痛みなど)はこれら自然免疫の働きで発生する、炎症によるものなのです。
迷惑と思ったら有り難かった
ドラクエのメダパニやね
第3段階『獲得免疫』
そして最後の砦となる免疫機能が、『獲得免疫』。
自然バリア、自然免疫でも撃退できなかった場合の奥の手、免疫システムの最終兵器です。
建物で例えると、自然バリアがセコムのような施錠セキュリティシステム、自然免疫が建物内を巡回する警備員だとしたら、獲得免疫は通報によって駆けつけた警察官といった所でしょうか。
感染から数時間で活性化する自然免疫と違い、獲得免疫は活性化するのに数日かかります。
まず入ってきた病原体を自然免疫システムの樹状細胞が病原体の情報をゲットします。
そして得た情報をT細胞と呼ばれる細胞が解析して、それぞれの細胞に攻撃命令を出すのです。
中でもB細胞と呼ばれる細胞は侵入した病原体をやっつけるのに適した抗体(武器)を作り出すことができます。
そして獲得免疫には「免疫記憶」があり、一度かかった病気にはその後かかりにくくなるのです。
ドラクエの凍てつく波動やね
本書による「正しい飲み方」が面倒くさすぎる件
この書籍は「一生健康に飲むための方法」を余すことなく綴った大変親切な本。
では健康に留意するための、お医者様から賜ったありがたい御託宣を少し確認していきましょう。
1日の飲酒量はビール1Lが上限
まずは飲酒の量です。純アルコール量で男性は1日平均40g以上、女性は20g以上の飲酒は生活習慣病のリスクを高めると言われています。ですので1回の飲酒量をそれ以下にする必要があります。
純アルコール量20gは缶ビールロング缶1本相当ですので、男性は2本、女性は1本以上飲んでしまうと飲み過ぎということ。もちろん「理想」はこの半分です。
それでも食道がんのリスクは1.45倍
なくてはならない休肝日
更に「絶対」に外してはならないのは休肝日の設置。
1週間に2日以上は飲まない日を設けることが必須。出来れば飲酒自体を週1〜2回程度にとどめるのが良いでしょう。ちょっと多めに飲むにしても、週の飲酒が純アルコール量で累計150gを超えないように、「常に」飲酒量を計算してください。
なん…だと…
つまり飲み過ぎた後、しばらくは少量の飲酒にするよう酒量を調整、コントロールしてください。
それがキチンとできるのなら…ですが。
血中アルコール濃度には常に注意
また飲酒する際は空腹で飲まない事。
空腹で飲酒をすると血中のアルコール濃度が上がり、悪酔いしやすく更に二日酔いになりやすくなります。
油分を含んだものがアルコールから胃腸を守ると言われていますが、フライドポテトや唐揚げなどの揚げ物は基本NG。胃酸逆流の危険性が高まります。
おすすめはチーズやドレッシングに油を使ったサラダだそうです。
カルパッチョなんかもいいよ
そしてお酒を飲む際は、飲む量と同量のお水(チェイサー)を合間に飲んでください。
これで脱水や血中のアルコール濃度を抑えることが出来ます。
飲酒後○○時間まで運転厳禁
そして忘れてはならないのが飲酒運転を防ぐための鉄の掟。
アルコールが抜け切るまで車の運転は絶対にしない事です。
つまりロング缶ビール1本(500ml)は純アルコールが20gなので、約5時間で抜ける計算。
40gで10時間、60gで15時間となります。これはあくまで目安なので、個人差があります。
おまけに女性は男性よりも体重が軽く、体脂肪率も高いためアルコールの分解にもっと時間がかかります。
え!そーなの?
久里浜医療センターは札幌医科大学との共同研究で、飲酒後に睡眠をとると、アルコールの分解が遅れることを確認している。20代の男女計24人を対象に、体重1㎏当たり0.75gのアルコール(体重60㎏の人でアルコール45g=ビール約1Lに相当)を摂取し、4時間眠ったグループと4時間眠らずにいたグループの呼気中のアルコール濃度を調べたところ、眠ったグループの呼気中のアルコール濃度は眠らずにいたグループの約2倍となった。こうした結果になった理由として、睡眠時にはアルコールを吸収する腸の働き、そしてアルコールを分解する肝臓の働きが弱まることが影響していると考えられるのだそう。
名医が教える飲酒の科学、本文より引用
ですので、飲んだ後すぐに寝てはいけません。数時間起きて過ごして、ある程度アルコールが抜けてから就寝してくださいね。
やなこった!!
とりま飲みすぎた翌日は丸一日運転をしてはいけません。
筋トレした日はノンアルがベストソリューション
そして筋トレの後は飲酒をしてはいけません。
ある研究によると筋トレ後にアルコールを摂取すると、筋肉の合成が3割程度減少するという報告があります。
仮に飲むにしても十分に時間を空けて、ビール(350ml)を1〜2杯程度なら影響は少なくなりそうとのこと。
あくまでも”可能性”
飲酒後のバスルームはデンジャーゾーン
飲酒後の入浴も厳禁。
飲酒をするとリラックス効果で一時的に血圧が下がります。
そんな状態でお風呂に入ると血圧が急激に上がり、「ヒートショック」を起こし心筋梗塞や脳梗塞、あるいは脳出血などで重篤な症状に陥る危険が高まります。
運転同様、飲んだ量から純アルコール量を計算して何時間で抜けるのかを確認して抜けた後で入浴しましょう。
お…おう
不毛な一生健康で飲むための「努力」
健康的にお酒を飲み続けるためには、これまでに述べられた「努力」を一生続ける必要があります。
一生です。
もちろんこれら「不断の努力」によって病気にならなければ、得るものは大きいと感じる方もおられるでしょう。
それは人それぞれなので、なんとも言えませんが、正直私には不毛に思えて仕方がありません。
そ…そんなストレスフルな飲酒生活を…一生だと!?
何よりもお酒をストレス解消のツールにしないことです。
そう、ストレス解消のための飲酒こそ依存症まっしぐらの飲み方。
なので、「節度」を持って、「落ち着いた環境」でゆっくりと嗜む程度に「適量」を飲まなくてはいけません。
はあああああぁっ!!?
え〜!?まだあるん?
飲酒は煩わしく、割の合わない娯楽
当書籍を読んで、つくづく思うのは
飲酒というのは「とんでもなく面倒臭い娯楽」だということではないでしょうか。
飲み過ぎを抑えるための工夫、
飲んだ後二日酔いにならないための工夫、
アルコール依存症にならないための工夫。
当然これだけにとどまらず、お酒のせいで薬が効きにくくなったり、散財したり、飲んだ時間、お酒が抜ける時間何もできなくなる、時間の浪費。
これらの「配慮」と「我慢」を酔っ払いながら、一生続けるのでしょうか?
っつーかそもそも、煩わしいアレコレを忘れるために飲酒してたんすけど、何か!?
さらに、アルコールは飲んだ瞬間にドーパミンが脳をハックして、正常な判断力を破壊します。
アルコールで脳が侵された状態で、「正常な判断」を一生続けるのは、無理ゲー過ぎると思うのは私だけではないハズ。
いわゆる「賢者飲み」が可能な人にとっては苦労は無いのでしょうね。
そんな用語はねえ!!
本書ではご丁寧に「後悔しない飲み方」なるものをレクチャーしてくれています。
しかし、飲酒をしなければ酒にまつわる後悔をすることなど、そもそもあり得ません。
ブログ主である私が酒と縁を切ったから、無理やりそう思うようにしているとも捉えられますが、実際問題、断酒の継続に努力は要りません。
うそつけ!
嘘ではありません。
人間は誰しも基本楽な方に流れる習性があります。
当然私も例外ではありません。
むしろ楽しか出来ない…えへっ♥
あんなに好きだったのに!?
理由は簡単で飲まない状況に今は完全に慣れて「慣性」で、いや「惰性」で断酒を続けられているからに他なりません。
このことに理屈ではなく、体験として気づいてしまったからです。
当書籍に綴られている、数多の涙ぐましいまでの行為はあくまでも、飲酒によって「不健康にならない」ための努力です。
決して「健康になる」ための努力では一切ない!という現実も見逃せないポイント。
マイナスを極力減らす方法で、プラスを増やす方法では無い
わかりきったことですが、「全くお酒を飲まない」事で得られるベネフィットを超えることは万に一つもありません。はっきり言って、「節酒の労力」と、「断酒の労力」は比べ物にならないほど「断酒の労力」の方が小さいです。
クッ!
お酒を飲まなくなった今ならはっきりわかりますが、ハナから飲まなければ一切発生しない労力と消費といえます。
断酒してしてしまえば、これらのお金、時間、労力を他のことに使えますよね。
そして健康的なメリットはもはや言わずもがなでしょう。
この著書に記されている、さまざまな「健康的に飲む工夫」を「全て」実践すれば、「ある程度」健康を害さずに飲酒を楽しむことができると思います。しかし私はこの本を読めば読むほど、飲酒の煩わしさに辟易してしまいました。
何度も言いますが、お酒を飲まなければ、これらの「工夫」を一切することなく、絶大な健康的、時間的、経済的アドバンテージを「全く労せず」得ることができます。
「飲酒ってマックスめんどくせぇ!!」
これが私がこの本によって得ることのできた、成果と断言いたしますよ!!
飲酒という、とてつもないサンクコストを回避するための最良の方法を暗に示している、という点においてこの本は断酒継続者にとって、「断酒最高!!」と叫びたくなる良書と言えるでしょう。
最後に私を含め、断酒している人達全員と言っても差し支えないほど多くの方々が、異口同音におっしゃるセリフを紹介します。
飲んで後悔した経験は星の数ほどあるが、飲まなくて後悔したことはただの一度もない。
言い切ってしまいますが、お酒と縁を切れば、人生における後悔の経験回数は確実に減ります!!
「減酒」か「節酒」か「禁酒」か「断酒」か判断材料におすすめです。