「体温」に関しては、効果的なのは「入浴」です。また、時間があればサウナに行くことも「体温」の睡眠スイッチには効果的。
ではもう一つのスイッチである「脳」に効果的なのは何でしょう。
「脳」のスイッチを睡眠モードに切り替えるには入浴後の過ごし方を工夫することが肝心。ちょっとしたルーティン、「儀式」を習慣化することで脳の持つ恒常性、いわゆるホメオスタシスによって睡眠モードに移行しやすくなります。
そこでかんたんなツールを利用し、「脳」スイッチを睡眠モードに切り替えるやり方を紹介したいと思います。ポイントは五感への穏やかな働きかけで副交感神経を優位にすること。そうすることで「脳」のスイッチをうまく切り替えられる様になるのです。
これらを使い、お酒不要の睡眠習慣を身につけましょう。
【視覚】間接照明の柔らかい光が入眠を整える
睡眠にもムード作りが大切。
脳は目に入る光に強く反応します。例えば朝日を浴びれば脳が活性化し幸せホルモンと言われる「セロトニン」を生成します。これによって交感神経が優位になりシャキッとした覚醒感や爽快感を得ることが出来るわけです。
それとは対照的に、リラックスモードになる副交感神経を優位にする状態も、光を利用することで得られます。
それは間接照明の光です。光には「色温度」呼ばれる性質が有ります。そしてこの「色温度」によって交感神経、副交感神経をある程度コントロールすることが可能。
「色温度」とはその名の通り、光の色味によって人が視覚的に感じる「温度感」です。ケルビン(K)という単位で表されており「冷たい」と感じる色はケルビン(K)数値が高く、「温かい」と感じる色はケルビン数値が低くなります。
ケルビン(K)数値が高い照明の色は「昼光色」と言われており、青白い光で色温度を示すケルビン(K)数値は6,500K程度。オフィスなどのデスクワークをする場所などは覚醒感を保つため、色温度の高い「昼光色」の蛍光灯などを使用します。
そして逆にリラックスを促す色温度が「電球色」と言われるオレンジの温かみを感じる照明です。
色温度を示すケルビン(K)数値は3,000K程度。
一般的な間接照明などがこの色温度になります。
これらの色温度を示すケルビンの数値は店頭で販売されている電灯など照明機器のパッケージに記載されています。
最近はスマホで設定操作でき、時間に合わせて自動で色温度を変化できるスマートLEDシーリングライトなどがあります。
ですが一番手っ取り早いのは、ニトリや無印良品、家電量販店で売っている照明を買ってきて設置する方法です。安いものだと3〜4千円程度で買えるので、照明器具本体と別売りの電球を一緒に買うとよいです。
電球は先程の説明を参考に3000K以下の電球を選んで、自身の部屋のベストポジションに設置しましょう。直接光が当たるようにはせず、壁などに反射させて置くことで、簡易的に間接照明が作れます。就寝一時間前くらいには間接照明に切り替えておくことで、脳に睡眠モードのスイッチが入りやすくなります。
【味覚】ホットミルクやハーブティーなどを飲む
ホットミルクやハーブティーなどを飲むのも、睡眠モードのスイッチングに効果的。
ホットミルクはマグカップに入れてレンジで1分程度温めれば、すぐ飲むことが出来ます。私の場合は牛乳ではなく、豆乳を温めて飲みます。
イソフラボン含有の多い「無調整豆乳」をレンジで温めて、無印良品の「ジンジャーココア」入れて飲みます。ココアにはカフェインが入っていますが、微量なので睡眠には影響しません。しかし気になる方は入れなくていいでしょう。
ちなみに無印良品の「ジンジャーココア」は秋冬季節の商品です。店頭にない時は「抹茶ラテ」や「ジンジャーチャイ」などでも美味しく飲めます。ノンカフェイン表記の商品もあるのでそちらを選ぶのがおすすめ。
ハーブティーには様々な種類があり、それぞれ効能に違いがあります。ペパーミントやローズマリーなど、集中力UPに効果的なものもあります。睡眠モードを促したいのであれば、おすすめはカモミールティーです。カモミールティーはリラックス効果や冷え性改善など睡眠には誂え向きの飲み物。こちらも無印良品などのショップ店頭にて手軽に買えるので、一度お試しいただくのがいいです。こちらもノンカフェイン表記の商品があるのでそちらをお選びください。
【嗅覚】アロマディフューザーの香りが気持ちを鎮める
匂いも睡眠を促すのに効果あり。アロマディフューザーを寝る前につけ、リラックスしましょう。
アロマディフューザー本体は無印良品やニトリ、ホームセンターなどで値ごろな商品を買うことが出来ます。大抵の商品は起動して、2〜3時間程度経つと自動で停止するようになっていまるので、つけっぱなしで寝ても問題ありません。
本体の他、大事なのは精油。(エッセンシャルオイル)睡眠に適した精油を選びましょう。有名なのはラベンダーやスイートオレンジ。ちなみに私が使っているのは無印良品のアロマディフューザー本体に同店で購入したブレンド精油です。無印良品の店舗には多くの精油ラインナップが用意されています。
その中でもおすすめが、睡眠に特化したエッセンシャルブレンドの「おやすみブレンド」。ブレンドされている内容は、ベルガモット、スイートオレンジ、サイプレス、ホーウッドが入っています。リラクゼーション効果が高く、寝る前につける習慣を行うことで、睡眠モードに移行しやすくなるでしょう。
無印良品やニトリなどの店頭には用途に応じた様々な効能のアロマが揃っているので、自身にあったものを色々試して見るのが一番いいかと思います。
【聴覚】リラクゼーションを促す音楽を聴く
寝る前の音楽もいい効果が期待できます。ここで言う音楽とはあなたの好きな音楽ではなく、睡眠に適した音楽のこと。
当たり前ですが、寝る前にハードロックやパンク、クラブミュージックなどアップテンポな曲を聞けば、興奮して目が覚めますので断固NG。
睡眠に適した音楽はCDで購入することが出来ます。かつては「feel」などリラクゼーション効果にフォーカスしたコンセプトCDがヒットしました。
しかし、現在のオススメはやはりサブスクリプションの音楽配信サービスです。月額千円前後で利用でき、有名所は「Spotify」「AppleMusic」「Amazon Music Unlimited」などでしょう。
「睡眠」や「リラックス」などで検索すれば、それに適合したジャンルの音楽が大量にヒットします。それらを寝る一時間くらい前や就寝時に再生して部屋のBGMにするのです。(ちなみに落語なども聴けます)私の場合ですと数年前から「AppleMusic」を契約しているのでそちらで聴きます。
iphoneやipadには「ショートカット」というアプリがデフォルトでインストールされています。この「ショートカット」は複数の操作が必要なアクションを自動で行ってくれる便利機能です。
まず、「睡眠音楽」など任意のテーマにあったショートカットを作ります。そしてそれをワンタップするだけで、「音楽アプリ起動」→「任意のアルバムまたはプレイリストをシャッフル再生」→「再生時自分好みの音量に調整」→「指定した時間に停止」を自動で行ってくれます。
また逆に起床時だと、オートメーション機能を使い「指定の時間に目覚ましアラーム」→「アラーム停止で音楽アプリ起動」→「任意のアルバムまたはプレイリストをシャッフル再生」→「再生時自分好みの音量に調整」→「指定した時間に停止」も出来ます。
使う端末やサブスクサービスによって、多少の違いはありますが、今の端末なら大抵同じ事が出来るでしょう。端末本体でも直接聴けますが、最近はBluetoothの小型スピーカーも安価な商品がたくさんあります。いろいろ調べて自身の好みに合ったやり方を見つけましょう。
【触覚】室温も大事、暑すぎず、寒すぎず
そして、なんと言っても寝る前に肝心なのは室温です。もう一つのスイッチである「体温」にも密接な関わりがあります。
季節や地域によっても対処は変わりますよね。冬の場合は温かい布団や厚手のスウェットなど、寝具や着るもので調整できます。ですが、やはり使い勝手がいいのはエアコンでしょう。
特に夏の場合は暑いと寝苦しくなり、体温も上がって熟睡出来ません。なので、冷房をつけて寝るのがいいのですが、いくつか工夫しましょう。
まずエアコンの運転は「自動」がいいです。「自動」の場合、室温の状態に合わせて風量を変えてくれるので、常に設定した気温になります。また部屋が設定した気温になっている時は使う電力も小さくなるので、結果的に省エネになります。
そして寝る時は起きている状態であなたにとって「ちょっとだけ暑いかな」くらいの設定温度がいいです。(27〜28度くらい)理由として、寝ると体温が下がるので、起きているときに丁度いい室温だと寝ている時は冷え過ぎてしまいます。
なので就寝時はエアコンと扇風機を併用して使いましょう。寝るときに微風の扇風機を当てて丁度いい体感温度にして寝るのです。扇風機にはタイマーが付いているので、1時間後くらいに自動停止するようにしておけば、体の冷えすぎを防ぐことが出来ます。
エアコンが苦手な人は「冷感敷パッド」など寝具を工夫して、自身が快適な睡眠環境を整えていきましょう。季節やその日の天気によっても気温は変わるので、その都度微調整する習慣を身につけると良い睡眠を獲得しやすくなります。
睡眠こそ人生最大のルーティン
照明による視覚効果。飲み物による味覚効果。アロマによる嗅覚効果。リラクゼーション音楽による聴覚効果。室温調整による触覚効果。こうして五感に働きかけることによって、脳の睡眠モードのスイッチング効果を最大化させましょう。
言わずもがなですが、これらはすべてやれば、即座に眠くなると言うものではありません。個人によって、効果の程度は変わります。なにより、あくまで「儀式」的な習慣づけの「対症療法」なので、所謂「プラセボ効果」の側面が大きいです。
プラセボとは「偽薬」という意味で、効き目ある成分が何も入っていないくすりを服用しても、患者さん自身が、自分が飲んでいるくすりは効き目があると「思い込む」ことで、病気の症状が改善することです。くすりを服用せず、ただ暗示をかけること自体もそう呼ばれたりします。
なので、無理のない範囲でできそうなものや、やってみたいものを選んで、試してみるといいでしょう。あなたに合わないものはすぐやめればいいのです。
人間は習慣の動物なので、一度しらふで眠れる習慣が身につけばすぐ眠れるようになります。睡眠習慣が根付けばそれに伴い、睡眠の質も上がってきます。
睡眠習慣は寝る前に何をするかも大事ですが、起きている日中をどう過ごすかも大事。適度な運動や食事など起床時のルーティンが睡眠のルーティンを形作り、メンタルやフィジカルにもいい影響をもたらします。
良い睡眠を味方につけて、生産性の高い気力、体力の充実した生活を送り、お酒不要の生活を謳歌しましょう。