「最高の睡眠」があれば、お酒はもういらない

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スタンフォード式最高の睡眠 著:西野精治

「世界一の睡眠研究所」といわれるスタンフォード大学。

同大学で長年研究に携わった睡眠研究のエキスパートである西野教授のこの著書。豊富な研究成果によるエビデンスに基づいて書かれてた本書を読んで、睡眠を味方につけましょう。

良質な睡眠で得られる効果は、体調や精神の回復だけではありません。美容効果やダイエットの促進、やる気などのモチベーションUP、生産性の向上など「良い睡眠」は「良い人生」に直結します。

そして禁酒、断酒を始めたことによって起こる不眠を解消する一助になることでしょう。しらふでの良い睡眠を得られれば、寝酒などは不要になります。良い睡眠を手に入れて、お酒が必要ない健やかな生活をゲットしましょう。

目次

睡眠は「借金」出来ても「貯金」は出来ない

睡眠負債

「睡眠負債」という言葉をご存知ですか?寝不足が続き、必要な睡眠が足りていない状態が蓄積されていくと「睡眠負債」という眠りの「借金」が形成されるのです。

「睡眠負債」が募ると、起きている状態でも悪影響が表面化。マイクロスリープ(瞬間的居眠り)という症状が発作的に起こり日中に1秒〜10秒程度、意識が飛んでしまうのです。

デスクワークの時は大した問題はありませんが、車の運転中に起こると‥、考えただけでゾッとしますね。しかし、「睡眠負債」が深刻な人はこれが、日常的に起こると言われています。そのため飲酒習慣がある方はこのマイクロスリープが起こる確率は、相当高いはずです。

それだけに留まらず、日本人は他国の人と比較して、平均睡眠時間が特に短く、マイクロスリープ大国とも言えます。これらは健康被害に留まらず、生産性の著しい低下にも直結するのは容易に想像できます。

「いや〜、寝てね〜わ、つれ〜わ〜」などと「地獄のミサワ」よろしく寝てない自慢をする、意識高い系(笑)がたまにいますが、自身の無能さを触れ回っているに過ぎないでしょう。

事実有能なビジネスパーソンほど、洋の東西関わらず、睡眠を最重要視するのはもはや常識です。

「睡眠負債」は休日の所謂「寝溜め」などで、解消することは難しいよう。ある実験によると恒常的に40分の「睡眠負債」がある人がこれを「返済」するためには3週間毎日、14時間もの睡眠が必要だったのです。

また普段睡眠がきちんと取れている人は必要以上の睡眠は出来ずに起きてしまうので、「借金」は出来ても「貯金」は出来ないのです。

更に別の研究では「寝不足」も当然ながら、逆に「寝過ぎ」も死亡率が高くなる傾向が確認されているのです。そういった観点からも「寝溜め」は極力止めておいたほうが無難では無いでしょうか。

睡眠不足の女性は「太る」

睡眠不足は太る

睡眠不足が肥満を引き寄せるのは多くの方がご存知でしょう。サンディエゴ大学が女性60万人を超えるモニター調査を行った結果、短時間睡眠の女性は肥満度を示すBMI値が高いという報告を出しています。

BMI(Body Mass Index)はボディマス指数と呼ばれ、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数です。BMI値は以下のサイトで調べることができます。

睡眠不足によって引き起こされる要因として、

  • 「インスリン」の分泌が悪くなり血糖値が上がる。
  • 食べ過ぎを抑制する「レプチン」というホルモンが出ず、逆に食欲を増進させる「グレリン」というホルモンが出るため食べすぎて太る。
  • 交感神経優位の状態が続き高血圧になる。
  • 精神が不安定になり、うつ病、不安障害、アルコール依存、薬物依存になりやすくなる。

など数々の健康被害が起こることが判明しています。

また女性は男性と比較して、アルコールの許容量が小さく、依存症になりやすいので特に注意が必要です。

良質な睡眠の鍵は最初の90分

良質な睡眠の鍵は最初の90分

最高の睡眠、それは入眠から最初の90分で決まる。この90分を「睡眠のゴールデンタイム」と呼び、これが翌日の快調さ、生産性を大きく左右します。

睡眠には深い睡眠と言われる「ノンレム睡眠」浅い睡眠と言われる「レム睡眠」があります。レム睡眠は「急速眼球運動(Rapid Eye Movement)」の略で、寝ている間瞼の裏で眼球がせわしなく動いています。

このときに人は夢を見るとも言われていて、睡眠中は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が交互に入れ替わります。

そして入眠直後に人は最も深い「ノンレム睡眠」が訪れ、そこから90分かけて「レム睡眠」に移行するのです。この最も深い「ノンレム睡眠」から「レム睡眠」に移行する90分こそが「睡眠のゴールデンタイム」でこの時間以降、緩やかな「ノンレム睡眠」、「レム睡眠」の繰り返しになります。

この入眠直後に訪れる90分の「睡眠のゴールデンタイム」の深度によって睡眠の質が決まるのです。これが上手く行かないとその後、どんなに長く寝ても睡眠の質は上がらない訳です。

映画のクライマックスは終わり頃訪れますが、睡眠のクライマックスは冒頭に訪れるのです。つまりこの最初の90分さえ、いい眠りにすることができれば、多少睡眠時間が短くなっても、体調や精神が大きく回復するということ。

しかし本書では先天的な体質を持った所謂「ショートスリーパー」と言われる一部の人以外はやはり、毎日6時間以上の睡眠を推奨しています。

そして質の良い睡眠によって得られる効能は数多く以下の通り。

脳と体の休息記憶の整理と定着
ホルモンバランスの調整
免疫力の向上
脳の老廃物除去

などが挙げられます。

これらの理由から有能なビジネスパーソンやトップアスリートは睡眠を非常に重要視しており、睡眠の質がパフォーマンスに大きく影響することを既に知っているのです。

体温と脳、「2つのスイッチ」が黄金の90分を作る

体温と脳

では睡眠の質を上げる、黄金の90分はどうすれば、得られるのでしょうか。その為に重要な役割を持つ「2つのスイッチ」、それが「体温」と「脳」

まず一つ目のスイッチ、「体温」へのアプローチ。

人は体内部の温度、つまり深部体温が下がる事で入眠しやすくなります。そしてそのためには脳がリラックスして副交感神経が優位な状態になる必要があるのです。

体温には
体表面の「皮膚温度」
体内部の「深部体温」があります。
この二つの体温差を縮めることが大切。「皮膚温度」は上がると熱放散して、「深部体温」を下げる性質があります。その性質を利用したのが「入浴」です。

就寝の90分前にバスタブに37度〜40度くらいの温めのお湯に15分〜20分程度浸かる。そうすると皮膚温度、深部体温ともに上がります。

お風呂から上がると熱放散が始まり、30分程度経つと深部体温は元に戻り、更に下がり始める。そうすると、就寝時ごろには深部体温と皮膚温度の差が小さくなり眠りやすくなるという訳です。

そのほかにも深部体温を下げる効果的な方法が本書では紹介されています。これが一つ目のスイッチ「体温」

そしてもう一つのスイッチが「脳」へのアプローチ。

なるべく退屈で、「いつも通り」のルーティンを確立するのが近道です。

読書などがおすすめですが、刺激の強いミステリー小説などは避け、専門書やビジネス書など感情の揺れが少ないジャンルの読書がいいでしょう。

また、動画を見たりして過ごしたい方もいると思います。そういう時のわたしのおすすめは「hulu」で配信されている「ナショジオチャンネル」です。「hulu」はアーカイブコンテンツの他、ライブ配信の動画もあり、24時間ライブ配信されているチャンネルがいくつか用意してあり、「ナショジオチャンネル」もその一つです。内容は主にアメリカのドキュメンタリー番組で、なんとなしに見られてのんびりできます。ほんのり知識も増やせるのでちょっと勉強になりますよ。

ジャズやクラシックなど音楽を聞くのも良いですし、YouTubeなどではさざ波の動画や暖炉の動画など、リラクゼーション効果の高い動画も配信されています。

また、照明を柔らかい光の間接照明に切り替えるなどの工夫も「脳」のスイッチを睡眠モードに切り替えるのに効果的です。

私の場合、レンジで温めた無調製豆乳にジンジャーココアを入れて、寝る1時間前に飲みます。そのほか、アロマディフューザーを利用したりと、そういった儀式めいたこと、所謂プラセボ効果も入眠スイッチに割と効果的だと思いますよ。

プラセボとは「偽薬」という意味で、効き目ある成分が何も入っていないくすりを服用しても、患者さん自身が、自分が飲んでいるくすりは効き目があると「思い込む」ことで、病気の症状が改善することです。くすりを服用せず、ただ暗示をかけること自体もそう呼ばれたりします。

実は寝酒が睡眠に良い!?

寝酒は睡眠にいい?

このタイトルを見て、身を乗り出した人はいますか?
本書ではオペラ歌手の入眠手段として、寝る前にウォッカを飲む方法が紹介されています。

オペラ歌手は公演の終了が夜遅く、更に衆人環視の中で全身全霊を込めて歌うので閉幕後も脳が活性化、つまり交感神経が優位な状態にあります。しかし、翌日の公演などのためにも早めに就寝する必要があるため、アルコール度数の高い少量のウォッカを飲んで、即寝するとのこと。

また、別の章ではアルコールによって「GABA」と言われる脳内物質の働きを強め入眠を促進させる方法も紹介されています。

だが、ちょっと待ってほしい。

これらのアルコールによる、入眠方法はどれも「少量の飲酒」に限定されます。

少量の飲酒とは日本酒で1合程度、ビールなら500ml缶1本です。(つまり女性はその半分)

なんてことはない、国が提唱する健康被害の少ないローリスクの「適切な飲酒量」です。この程度の飲酒で眠れないからこそ、あなたはおそらく当ブログの記事を読んでいると思われるので、やはりお酒は不要と言えるでしょう。

また、本書に話を戻すと、適量を超えた飲酒はレム睡眠を阻害し、深いノンレム睡眠も出現しなくなるので、睡眠の質は確実に下がると結論づけています。

覚醒時の行動が睡眠の質を決める

覚醒時の行動が睡眠の質を決める

最高の睡眠を得るためには、起きている時の習慣が重要。そしてここでも「2つのスイッチ」が鍵となります。それは、「光」と「体温」

1つ目のスイッチ「光」

生物の体は24時間前後で1周する体内時計の「サーカディアンリズム」と呼ばれるサイクルが機能しています。このサイクルは睡眠時は勿論、覚醒時にも密接に関わっているのです。

地球の自転に同調し、朝目が覚めて、夜眠くなるのはこの「サーカディアンリズム」によるものです。

なので朝、日が昇り朝日を浴びることで(曇りでもOK)、「光」で脳が活性化しセロトニンが生成されて爽やかな気持ちになれます。

そしてセロトニンは夜に睡眠物質とも言えるメラトニンを生成し「サーカディアンリズム」による眠気を呼びます。

2つ目のスイッチ「体温」

睡眠時は体温を下げることが大事ですが、起きている時は逆に体温を上げることで、交感神経が活性化し、シャキッとします。

この日中の覚醒感が、夜の睡眠導入に効果を発揮するのです。

簡単で有効な行動はやはりウォーキングなどの適度な運動が一番でしょう。そのほか覚醒感をあげるのに効果的なのはご存知コーヒー。カフェインの効果で脳が活性化して仕事の能率が上がります。加えて脳のパフォーマンスが上ることで、脳に良い疲労感をもたらし、夜眠気を呼び込んでくれるでしょう。

注意して欲しいのはカフェインによる覚醒効果は4時間以上続くので、できれば午後3時以降は飲まないようにしたほうが良いです。

就寝時間の固定は難しい、まずは起床時間を固定しよう

起床時間を固定しよう

良い睡眠を得るには、やはり決まった時間に就寝し、決まった時間に起きる習慣付けが何よりでしょう。

理想を言えばそうなりますが、実際に社会生活を営んでいると希望通りにはなかなか行きません。なので睡眠の質を上げるなら、まず起きる時間を固定するのが手っ取り早いです。

仮に残業などで就寝時間が遅くなっても翌日は決まった時間に起きる事で、起床後14〜16時間ほどの覚醒で「睡眠圧」が高まり、その日よく入眠できます。

寝るのが遅かったからと、起床時間を遅くしたり、休日に寝溜めをすると「サーカディアンリズム」がずれてしまします。

睡眠は習慣が大事なので、その日眠れたかにこだわるより、一週間や一月を通して、平均的にどれだけ質の良い睡眠を習慣的に確保できたかにフォーカスすると良いでしょう。

本書はこういった方法論のほか、医学的、テクニカルな情報など睡眠に関する効果的なアクションが色々と紹介されているので、ぜひ一読ください。

そして、お酒がないと眠れない「悪習」を改め、心地のいい睡眠と爽やかな目覚めを手に入れ、充実感のある生活を過ごすためのヒントにしてください。

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