あなたは繊細なタイプの人間でしょうか。本書で紹介される「繊細さん」とは心が敏感で、大抵の人から見れば些細なことと思えることにも強く反応してしまい、周りを気にしすぎて疲弊してしまう方のこと。
根が優しい「繊細さんは」人が何気なく言った言葉にもとても深刻に受け止めてします。私自身はいわゆる「繊細さん」には入らないタイプですが、この本を読んで思ったのはこの真面目で人が良すぎる「繊細さん」と言われる方というのは、アルコール依存症を患ってしまう方の多くにも意外と特徴が当てはまるのではないかと言う点です。
この記事を読んで、もし特徴が合う方がいればこの本を読むことで、自身の内面を理解し禁酒、断酒へのマインドセットを整えやすくなるかもしれません。
「繊細さん」は心が敏感
「繊細さん」が持つ所謂「繊細さ」というのは、先天的な気質です。近年ではHSP(Highly Sesitive Person)といわれ、5人に1人の割合で存在し、日本でも研究が進んでいます。
HSPの方は「気にしない」ということがなかなか難しいよう。なので「気にする」自分を変えるより、自身の持つ「繊細さ」を自覚して個性として受け入れることで、気持ちが楽になります。
「自分は気にしすぎてしまう人間」と自覚することで、自分が思っているより、他人は気にしていないと気づけます。自意識過剰と言ってしまえば身も蓋もありませんが、「繊細さん」が持つ「敏感力」は人の機微を感じ取ることに長けた能力にもなりえるのです。
- 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ
- 他人の気分に左右される
- 痛みにとても敏感である
- 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
- カフェインに敏感に反応する
- 明るい光や、強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい
- 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい
- 騒音に悩まされやすい
- 美術や音楽に深く心動かされる
- とても良心的である
- すぐにびっくりする(仰天する)
- 短期間にたくさんのことをしなければならないとき、混乱してしまう
- 人が何かで不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)
- 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ
- ミスをしたり物を忘れたりしないようにいつも気をつける
- 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
- あまりにもたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり神経が高ぶる
- 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
- 生活に変化があると混乱する
- デリケートな香りや味、音、音楽などを好む・動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
- 仕事をするとき、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
- 子供の頃、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた
出典:講談社『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』
以上の質問で12個以上「はい」と答えた方はHSPの可能性があります。あくまで心理テストなので、当てはまらなくても「繊細さん」の場合もあります。
気を使いすぎて人といると疲れる
「繊細さん」は周りの空気に敏感で、所謂「空気を読み過ぎてしまう人」。他人の感情の機微を即座にキャッチしてしまい必要以上に気を使ってしまうのです。
そのため「気にしない」という対処ができないので、すぐに疲れてしまいます。繰り返しになりますが、生まれ持った気質なので、変える必要はなく「気にしすぎる自分」を理解し受け入れることが大事です。
相手の気持ちを汲み取って「他人優先」になってしまうのは良い美徳ですが、そういう自分に気づいたら少し立ち止まり、あえて自分の気持ちを優先するようにして、バランスを意識しましょう。
イメージとしては車を運転する際、渋滞中脇道からどんどん入ってくる他の車を譲ってばかりだと自分が進めません。一台譲ってあげたら次は自分が進むのを優先する、といった感じでしょうか。
また、「繊細さん」の特徴として、アドリブに弱い面があります。会議などで急に意見を振られると「100点」の答えを出そうと、固くなってしまい自縄自縛に陥ってしまいます。
予め答えのハードルを下げることを意識しましょう。多少とりとめのない答えでも素直な気持ちで答えようと、自身に言い聞かせておくことで、意見が言いやすくなるはず。意見を言うことに慣れて自然体を維持できるようになれば、人も自分も納得できる良い意見を出せるようになると思います。
また「繊細さん」は自分を環境に合わせるのではなく、「自分にあう環境」を探すことに意識を向けることが大切。職場など今の自分の環境をよく観察し、自分の精神状態に負担になっていないかを考察し、改善可能なら素直に相談して協力をお願いしましょう。
それが難しいようなら、転職なども視野に入れて、その場から離れる方法を考えたほうがいいでしょう。
敏感な心と身体をお酒で麻痺させてませんか?
「繊細さん」が敏感なのは、心だけではありません。「繊細さん」は基本的に外的な刺激にも弱く、普通の人よりも鋭い五感を持っているそうです。
しかし、敏感な心と五感を手っ取り早く和らげてくれるものがあります。そう、アルコールです。
お酒を飲むとリラックスして、心が落ち着きます。また、敏感だった五感も鈍くなり、気にならなくなりますよね。
「繊細さん」は自身の気質が劣等感の要因になっている方が少なくありません。そんな劣等感と敏感な心と身体を麻痺させるためにアルコールを摂取している「繊細さん」が割と多くいるのではないかと私は推察します。
前述の通り「繊細さん」は気を使いすぎて人といると疲れる為、一人でいることを好みます。一人のときに敏感な心と五感を和らげるためにお酒を飲むことが習慣になってはいませんか?
そうなると元々感覚が鋭い「繊細さん」にとってはまさに地獄。それが嫌で、アルコールから離れられればよいのですが、御存知の通りアルコールには強い中毒性があります。
我々は二日酔いの最も早い取り除き方を知っています。それはもちろん飲酒一択。飲んで酔うことで、脳と五感が再び麻痺して二日酔いの精神的、肉体的苦しみから逃れることができます。
アルコール依存症者と「繊細さん」であるHSPには共通点が多いように思います。人がよく、責任感が強くて自分に自信がないうえ、孤独になりがち。アルコール依存症者の多くがこれらの気質を持っており、その悩みからの逃避手段としてお酒を飲んでしまうのです。
一説によると女性は男性と比較して、心身が「繊細」なためアルコール依存症になりやすいと言われています。
そう考えると「繊細さん」であるHSPの方とアルコール依存症は親和性が高いように思えてなりません。やはり「繊細さん」とお酒は相性が悪いように思いますが、いかがでしょうか。
周りに振り回される自分に気づく
「繊細さん」は感受性が豊かで共感する能力が高く、他人の事柄も自分ごととして捉えてしまします。
そのため新聞やTVのニュースなどで悲惨な事件を知ってしまうと、普通の人より大きく心を痛めます。
新聞やTVのニュースなどはやはり「商売」なので注目を集めるため「意図的」にセンセーショナルな見出しで、見ている人の感情を必要以上に煽ります。このようなバイアス(偏向意図)のかかった情報は「繊細さん」にとっては刺激が強く、精神の負担になります。
人間生きていく上で本当に必要な情報はそんなに多くありません。
自分にとって必要な情報は能動的に取捨選択することが大事。ネットや書籍、信頼できる人づてに情報を収集する習慣をつけましょう。
新聞やTVといった受動的な媒体は精神衛生上避けるほうが賢明です。
人間関係においても、気を使い過ぎてしまう為、自分と他人との意識のギャップに苦痛を感じてしまいます。自分の「常識」が他人には「常識」ではないので、戸惑ってしまうのです。
「繊細さん」にとっては所謂「暗黙知」のレベルが高いため「言わなくてもわかる」が基本周りに通用しません。それで、「なんで自分だけ‥」と空回りをしがちになります。
解決法はシンプル‥というか、基本これしかないと思いますが、「素直に自分の気持ちを話す」のが一番でしょう。相手が同じ日本人の場合なら大抵これで解決します。
「自分はこう思っているからこうしてほしい」「自分にとってはこれは苦痛なので控えてほしい」など、相手に多少頼る気持ちを意識的に持つことが大事です。
それでも、理解してくれない人と無理に付き合うのは苦痛なので、接触回数を減らすように心がけるのが良いです。そしてすぐに自分ごととして捉える内面を自覚して、「この人はこう思っている、私とは違う」と意識して少し突き放して聞くくらいが丁度いいのです。
そのへんの具体的な工夫のコツを本書では解説しているのでぜひ一読をおすすめします。
「繊細さ」をアルコールで潰すのはもったいない
前項で述べたように、アルコール依存症の方と「繊細さん」は多くの共通点があります。
一昔前はアルコール依存症は「アル中(アルコール中毒)」と蔑視されていました。そのためアルコール依存症者は「落伍者」のレッテルを貼られがちでした。しかし近年では真面目で責任感のある「いいひと」ほど、陥りやすい病気ということが理解されるようになってきています。
「繊細さん」も自身の持つ性特を「劣っている」と捉えがちです。しかし、もしもその劣等感や自分の生まれ持った特性を慰めるためにお酒を飲んでいたとしたら、とてももったいないことです。
仕事が丁寧な「繊細さん」は非常に慎重なため、一つ一つのタスクを消化するのに時間がかかります。そのため、のべつ幕無しに仕事が来て、マルチタスク状態になるとオーバーフローに陥ります。
そういった自分の仕事ぶりをみて「自分は仕事が出来ない」と思い込みがちです。世の中には多くのタスクを一度にこなすのが上手な人と、一つのタスクを丁寧に完璧に仕上げるのが上手な人がいて、「繊細さん」は基本的に後者です。そういった「繊細さん」のもつ、特性は素晴らしい長所になります。
同じような悩みを抱えているのはあなた一人ではなく世の中には多くの「繊細さん」やアルコール依存症者がいます。そして現在はネット、とりわけSNSですぐつながることが出来ます。
そういったいい意味での「薄いつながり」は自身の持つ「劣等感」が実は誰しも抱えている「寂しさ」であることを知ることが出来ます。
もちろんSNSひとつで問題が抜本的に解消はしません。
しかしまずは「自分だけじゃない」という現実を知り、「薄いつながり」だからこそ出来る「肩の力を抜けるコミュニティー」の構築は自身が楽に生きる為の「一里塚」になるのではないでしょうか。
アルコール依存症者も「繊細さん」も自信のない人は一事が万事で自身を評価をしがちです。
義務感が強くなんでも一人で抱え込む人はアルコールに逃げる特性がありますが、あなたは違いますか?
仲間と楽しく飲むお酒を否定する気はありません。しかし、嫌なこと、嫌な自分を忘れるための飲酒はとても危険です。
飲酒に問題意識を抱えている人が本書を読み、自分が「繊細さん」だと当てはまった方が、自分の持つ長所を生かして、お酒以外の「楽しいこと」を身につけることができれば幸いです。