コンフォートゾーン(ComfortZone)とは和訳すると居心地のいい、「快適な領域」です。
人は誰しも快適な環境に身を置きたいもの。
あなたは禁酒、断酒が辛く、飲酒習慣を手放し難いと感じていましたよね?
その大きな理由は「飲酒習慣」そのものがあなたのコンフォートゾーンにあるからです。
よって「飲酒習慣」をあなたのコンフォートゾーンから離脱させない限り
禁酒、断酒には常に「我慢」が付きまといます。
でも逆に考えれば禁酒、断酒をコンフォートゾーンに移行させれば、
飲まない習慣こそが快適で居心地のいいものになるのです。
では惰性的飲酒習慣をコンフォートゾーンから離脱させ、禁酒、断酒をコンフォートゾーンに置き換えるにはどうするべきか。そのへんを一緒に考察していきましょう。
コンフォートゾーン、ラーニングゾーン、パニックゾーン
人は活動や生活を営む上で主に3つの領域が存在すると言われています。
それがコンフォートゾーン、ラーニングゾーン、パニックゾーンです。それぞれ説明していきましょう。
コンフォートゾーン(ComfortZone)
「快適な領域」を意味する、最も楽な慣性状態。
飲酒習慣が常態化してしまった人は、飲酒行為がコンフォートゾーンになってしまい、
それこそが居心地のいい状態になります。
よって、急にお酒をやめると、ソワソワとしてしまい落ち着きがなくなります。
コンフォートゾーンは人間のいわゆるデフォルト状態と言えます。
平常心や安心感を得られる、とても大切な状態ではありますが、
コンフォートゾーンに常駐していれば学びが少なく、自己成長は出来ません。
ラーニングゾーン(LearningZone)
「学びの領域」を意味する、新しい物事に挑戦しているある種の緊張状態。
コンフォートゾーンの外側の領域がラーニングゾーン。
禁酒、断酒を開始すると慣性で飲んでいたお酒がなくなり、
あなたの心理状態がまさにラーニングゾーンに突入します。
前述の通りお酒が飲めない事に対し、ソワソワと不安になります。
しかし、この不安こそが学びによるラーニングゾーンにいる証なので、
しっかり理解することが大事です。
パニックゾーン(PanicZone)
「混乱の領域」を意味する、自身のコントロール領域を超えた極限状態。
ラーニングゾーンの更に外側がパニックゾーンになります。
自身のコントロールが及ばない、危険な状態と言えるでしょう。
深刻なアルコール依存症者は、飲酒できない事態がまさにパニックゾーンになります。
離脱症状として肢体の震え、激しい動悸、強烈な不安感などとても自身の手に追える状態ではありません。
そのような方は何をおいても専門医の助力が必要不可欠。
一刻も早く専門外来に行って適切な治療を受けてください。
そしてまずは、お医者様の監修のもとお酒と適度な距離を保ちパニックゾーンからラーニングゾーンへと移行させるリハビリをしていきましょう。
これらの領域解釈は他にも分類分けがあり、
コンフォートゾーン→フィアーゾーン(恐れの領域)→ラーニングゾーン→グロウスゾーン(成長の領域)といった4つの領域分類などもあります。
どちらも意味合い的には似ているので、今回は上記のゾーンで記事を展開します。
「飲酒習慣」のコンフォートゾーンから、「禁酒、断酒チャレンジ」のラーニングゾーンへ
繰り返しになりますが落ち着かなくなり、飲みたい欲求との格闘が始まります。
サッカーの試合でいうところのまさに「アウェイゲーム」です。
「ホームゲーム」と違い、普段の力が発揮できない状態で様々な所作が不安定になってしまうでしょう。
まさに禁酒、断酒における「緊張期」や「壁期」の状態そのものと言えるのではないでしょうか。
しかしそれこそが、あなたが今現在進化している成長中の状態と言えます。
コンフォートゾーンとは基本的に自身にとって、楽で内向きな思考状態。
対してラーニングゾーンは新しい学びを得るための外向きな思考状態と言えます。
人それぞれですが、私自身の過去に置き換えて鑑みた場合、お酒が手放せなかった当時は、お酒で酩酊して自分の世界にこもっているイメージでした。
そうすることで、虚しい気持ちや不安な気持ちを一時的に騙せたからだったと思います。
まあ、単純にアッパラパーな状態になりたかっただけかもしれませんが…。
なので、お酒をやめるという行為そのものが居心地のいいコンフォートゾーンから、学びのラーニングゾーンへ移行する、ちょっとしたパラダイムシフトになるのです。
ラーニングゾーンをクリアするために必要なのは、やはり「自信」でしょう。
「自分は出来ている」という自己肯定感(セルフエスティーム)が学びを加速させます。
私が禁酒、断酒をするにあたって効果的だったのはカレンダーの活用です。
カレンダーを部屋のすぐ目に入る位置に設置します。
そして、飲まなかった日に大きく◎をつけるのです。
古典的なやり方ですが、効果は絶大でした。
前に進んでいる感覚を可視化することで、自信はゆっくりと、そして確実に育ちます。
「思考」は時間の無駄、まず「行動」から
飲酒習慣のコンフォートゾーンから抜け出し、禁酒、断酒のラーニングゾーンに一歩踏み出すには些末な思考など無駄です。
何においてもまず行動する愚直さや素直さが不可欠です。
「効果があるかも…」と思ったらそれ以上は思案せず、すぐやってみて下さい。
- 炭酸水がいいと思ったら、すぐ買って飲む
- 湯船に浸かるのがいいと思ったら、その日に必ず入浴
- 甘いものを食べたほうがいいと思ったら、たらふく食べる
- サウナがいいと思ったら、最寄りの施設に直行
- ランニングがいいと思ったら、走る
- 筋トレがいいと思ったら、すぐやる
数え上げればキリがありませんが、「やっても無駄かも…」という思考、逡巡こそが実は最も無駄な時間と知りましょう。
本気で、お酒をやめたいと思っているのなら、今すぐこのPCやスマホを閉じて、ランニングしてきて下さい。その場で腕立てスクワットをして下さい。
「バカみたい」と思いますか?そうです、今すぐバカになって「行動」してみて下さい!!
賢しらな「思考」はなにも変えません。
「行動」以外に現状を変えることなど出来ないのです。
間違いないのは惰性でお酒を煽っていると確実に今より「もっとバカ」になりますよ。
そもそもコンフォートゾーンに身を置いているとき、
人は自分がコンフォートゾーンにいる自覚はありません。
なので、「面倒だな…」と思ったときは、自身の弱い部分が、コンフォートゾーンに引き留めようとしていると自覚しましょう。
こういった現状を継続しようとする状態を現状維持バイアス、または「ホメオスタシス」と言います。
コンフォートゾーンと「ホメオスタシス」は一心同体。
故にこの心理状態の理解が、ラーニングゾーンへ一歩踏み出すきっかけになるのです。
飲まない習慣をコンフォートゾーンへ落とし込む「ホメオスタシス」
飲酒習慣が常態化した人は飲む行為が、コンフォートゾーンになり、
そこに留まろうとする慣性力学が働きます。
これが飲酒の「ホメオスタシス」で、この現状維持バイアスこそが、お酒から離れなくさせる、依存症の正体とも言えるのです。
よってこの自身の「ホメオスタシス」を理解し、
飲酒の慣性、現状維持バイアスの脱却から始める必要があるわけです。
具体的な方法は前述の自己肯定感を上げるための「小さな行動」を確実に実践するのが一番です。
「小さな行動」は別名ベイビーステップ(BabyStep)などともいいます。
私の場合はカレンダー記述法などでしたが、各々にあったやり方を見つけるのがいいでしょう。
こうして、飲酒の「ホメオスタシス」を飲まない習慣の「ホメオスタシス」に変えていくのです。
これによって飲まないことがあなたのコンフォートゾーンへと変化していきます。
そしてラーニングゾーンにあった行為が、コンフォートゾーンに移行(コンフォートゾーンが拡張したともいえる)すれば、様々な可能性が広がります。
ここで車の運転を思い出してください。
仮免許取り立てのときは公道を運転するのにも緊張しましたよね。
ハンドル操作もおぼつかず、駐車ひとつに悪戦苦闘。
ミッション車だと更に難しく、クラッチの踏むタイミング、
走行速度に合わせたシフトチェンジなどまさにラーニングゾーン真っ只中。
しかし、慣れてくるとあらゆる操縦が難なくできてしまいます。
これは運転操作がラーニングゾーンからコンフォートゾーンに移行したからに他なりません。
そうなると運転以外のことも同時に出来るようになります。
同乗者との会話などは朝飯前で、標識や対向車、歩行者の確認も自然と頭に入ります。
運転中にコーヒーを飲むのも、タバコを吸うのも楽勝。
それに過信して、スマホを操作しながらの運転はとても危険ですので絶対におやめください。
運転中のスマホいじりは論外ですが、
このように新しい習慣やチャレンジにはコンフォートゾーンとラーニングゾーンの理解が不可欠なのはおわかりいただけたでしょうか。
どっちが本物の自分?
禁酒、断酒を始めると開始当初からしばらく、少なくとも「緊張期」の間は「我慢」を強いられます。
飲みたい欲求でソワソワと不安になるのは前述の通り。
そして「我慢」の禁酒、断酒が継続困難なのは繰り返し主張してきました。
ふと「こんな我慢を続けても意味ないかも…」と思うことは私にも幾度となくありました。
そういうときは、夜の自分の感情(欲求)と、
朝目覚めたときの感情(気分)を比較しましょう。
止めたての時、夜は大抵「飲みたいな」と思いますよね?
先程のような迷いも頭をもたげるでしょう。
ではシラフで寝て、朝目覚めた時あなたは後悔していますか?
「ああ、昨夜はお酒飲まなくて失敗、残念」と思うなら、
禁酒、断酒をする必要はそもそもありません。
朝目覚めた時間は脳が最もクリアで、「頭のゴミ」が一掃された状態。
つまりあなたの頭が本領発揮している時間帯です。
少なくとも私の場合、そういった朝は
「昨夜”も”お酒を飲まずに本当に良かった!」
「飲まなかった俺はエライ!!」と
充実感を感じていました。
流石に1年も経つとそこまで新鮮な気持ちはありませんが、
この朝を手放したくはないとは今も日々感じています。
つまり、朝のこのスッキリとした充実感こそ自分の紛れもない維持すべきリアルだと「納得感」を持てれば、飲まない毎日こそがコンフォートゾーンになるでしょう。
そしてその朝の偽らざる気持ちを飲酒欲求が出たときに必ず反芻するのです。
禁酒、断酒当初は眠れなくなるのは何度も述べました。
しかしそれも精々、一週間から二週間の短い期間です。
禁酒を悩んでいる方はまず、酒なしの睡眠を数週間味わってから、継続するかどうかを判断してみましょう。
お酒の呪縛から放たれた、解放感を自身の中にしっかりと落とし込めるかどうかが肝要。
シラフでいられる自分のエフィカシー(自己効力感)を自覚して、お酒のないコンフォートゾーンを確立させていきましょう。全ては「飲まない」最初の一夜からです。
禁酒、断酒の「その先」
お酒をやめることだけが目的になると正直しんどいし、続かないでしょう。
過去との決別の特効薬は未来の展望以外にないからです。
アルコール依存症を患った方は例外なく「視野狭窄」に陥ってます。
お酒が意識の中心にあるため、それ以外の選択肢が見えずとにかく理由をつけて飲みます。
よって、禁酒や断酒といった行為を「依存からの脱却」ではなく、「好きな物の我慢」と捉えてしまうのです。
禁酒、断酒をすすめる上で基本とも言えますが、禁酒、断酒が「出来ない」人はいません。
理由はシンプルで変われない人間などいないからです。
むしろ「変わりたくない」と思っていても、否応なしに人は常に変化します。
当然飲酒を続けていても、「変わる」のです。基本的には悪い方向にですが…。
諸行無常とはよくいったもので、
赤ちゃんは少年に、少年は大人に、大人は老人に、老人は死者に変化するでしょう?
嫌な表現だな…
ではなぜ、禁酒、断酒に失敗するかというと、
結局「お酒止めたくない」からです。
何当たり前のことを…と思うかもしれませんが、これは自分の意識に対する理解が足りないのが要因です。
闇雲に「我慢」をしても、人は易きに流れます。
理由は簡単で飲酒のコンフォートゾーンに身を置きたいから。
お酒の依存、支配から解放された後、何がしたいのか。
「その先」をしっかりと設定する必要があります。
例としてあげればいくらでもあります。
- お酒を1年止めて浮いたお金で、買いたい物を買う。
- 酒代をすべて、長期型の積立投資に回し老後の資産運用、計画を立てる。
- お酒が抜けて健康になったら、やってみたかったスポーツやレジャーを始める。
- 資格を取って、やりたかった仕事に転職する準備を始める。
など、今まではお酒に流されて諦めていた事を始める「きっかけ」にするのです。
とは言え、最初からそんな先のことを考えるのはかえってモチベーションが下がるかもしれません。
だから最初のうちは小さなハードルからコツコツ始めましょう。
最初に1日飲まず「我慢」する
↓
3日間の禁酒を継続
↓
1週間の禁酒を継続
↓
2週間の禁酒を継続(緊張期クリア)
↓
1ヶ月の禁酒を継続
↓
3ヶ月の禁酒を継続(ハネムーン期クリア)
↓
半年の禁酒を継続(壁期クリア)
↓
1年の禁酒を継続(適応期、解決期クリア)
↓
2年の禁酒を継続(もう「断酒」でいいじゃん!!)
といった具合に少しずつレベルアップして、
飲まない習慣のコンフォートゾーンを広げていくのです。
新たなラーニングゾーンとは今まで飲酒の「視野狭窄」によって見えていなかったあなたの「可能性」そのもの。
そうやって、今あるコンフォートゾーンの拡張とともにラーニングゾーンを広げ、禁酒、断酒の「その先」を「領域展開」していきましょう。
そういったあなただけの意義や目的を常に意識の根底に持つことが大事です。
そこまでくれば、シラフの状態こそが現状維持バイアスの働く「ホメオスタシス」に変化しているはずです。
お酒を1年もやめれば、飲酒時代には見えなかったあなただけの未来が見えるようになりますよ。(キッパリ!)
あなたの幸福バランスを崩す、それがアルコール
飲酒も嗜む程度なら、問題ないのです。
しかし、私の場合それで済まなくなりました。
おそらくあなたもそうでしょう。
飲酒習慣に問題があると自覚している方に向け当ブログは執筆しているので、「酒=心身に悪いもの」と定義して話を進めてきました。
ゴールとは結局の所、あなたや私の幸福です。
あなたにとって飲酒が幸福をもたらすものなら、やめることはありません。
でも私にとって飲酒は幸福を約束してくれるものでは有りませんでした。
一時的な多幸感は得られるから、それがかえって厄介
当然、禁酒や断酒もそれ自体があなたを幸福にするものでは無いでしょう。
ラーニングゾーンへの挑戦とコンフォートゾーンの拡張こそが、幸せの道筋と言えるかもしれません。
シラフの毎日が当たり前になれば、違うことに目が行きます。
「この明瞭な思考と軽快になった体で、次はどんな行動、挑戦をしよう」
そう思えれば、飲まない習慣がコンフォートゾーンの内側に移行したと言えます。
そうなると、禁酒、断酒などに意識を割いてる必要はなくなります。
そして、次のステージ、つまり新しいラーニングゾーンへのチャレンジが始まるのです。
この繰り返しが、楽しく充実した日々を自身に与え、
幸福を希求する健全な行動力になるのではないでしょうか。