禁酒、断酒を始めて充実感を得られる「ハネムーン期(15日〜90日)」を過ぎると訪れる断酒の鬼門、それが「壁期(91日〜180日)」です。
多くの断酒者が挫折をして、スリップ(再飲酒)してしまうのがこの期間。
あのオリラジのあっちゃんこと中田敦彦氏もどうやら、この時期に再飲酒をしてしまった模様。
今回のこの時期の過ごし方と、乗り越え方を私なりの解釈で記事にしたいと思います。
今現在「壁期」で苦しんでいる方に少しでも参考になれば幸いです。
禁酒、断酒のメリットが頭打ちに?
禁酒、断酒を始めると訪れる5つのフェーズ。
- 緊張期:(0日〜14日)
- ハネムーン期:(15日〜90日)
- 壁期:(91日〜180日)
- 適応期:(181日〜270日)
- 解決期:(271日〜365日)
今回は、「ハネムーン期(15日〜90日)」を過ぎた後に来る、「壁期(90日〜180日)」について記事にします。
「緊張期(0日〜14日)」のような身体的キツさや強い飲酒欲求自体は無いのですが、気持ちの落ち込みや虚無感に襲われる人が多いことで知られています。
理由としては「ハネムーン期」に得られていた睡眠改善による朝のスッキリ感、お酒を飲まないことで機能回復していた体調優良状態がすっかり当り前になってしまいメリット感が得られにくくなるため。
いわゆる限界効用逓減(げんかいこうようていげん)の法則が働いている状態と言えるでしょう。
限界効用逓減の法則とは、繰り返すことによって効果の実感が逓減(目減り)していく法則のことです。
様々なシーンで実感するこの法則ですが、今回は禁酒、断酒で考察してみましょう。
「緊張期」を過ぎると、睡眠が比較的安定していき、眠れないストレスから開放され、スッキリした朝を迎えられるようになります。
また、お酒を飲まずに過ごせている自己効力感も相まって、心身がみなぎり充実感を得られて能動的になる。
これがご存知「ハネムーン期」ですよね。
しかしラブラブのカップルにも倦怠期があるように禁酒、断酒にも倦怠期が存在します。
それがまさに「壁期」。
ハネムーン期当初の睡眠獲得感が100だったとします。
しかし、この100の獲得感が続くのはせいぜい2〜3日、
一週間後には70のくらい感覚になります。
3週間後には50、そして3ヶ月後には10…とまあ、この辺は私の勝手な比喩表現ですが、そんなに的外れでもないでしょう。
こうして、ハネムーン期のラブラブカップルはいつしか、一緒にいるのが当たり前になり、次第にお互いが疎ましくなる。よくある話です。
こうして、眠れる、体調がいいなど、ハネムーン期では得られるだけで感じていた喜びもいつしか慣性が働きピュアな気持ちを忘れ、逆に飲めない虚無感へと次第に変わっていくのです。
当然飲酒にも限界効用逓減の法則は働きます。
かつてはほろよい1缶で満足していた初(うぶ)な女の子も繰り返し飲酒することで、いつの間にかストゼロを何本も空ける酒豪になっていくわけですね。
こうして私達はアル中になっていったのではないでしょうか。
厄介な症状「断酒うつ」
私を含め、多くの断酒者がこの時期特有の虚無感を感じて、「うつ」のような症状に見舞われるのです。
これにより、
- 「もう、これ以上我慢しても意味がない」
- 「お酒を飲んで、虚しい気分を紛らわしたい」
- 「これだけ飲まないでいられたんだから、これからは適量でいける」
などと、飲む理由を探し始めるのです。
また、ハネムーン期の記事でも書きましたが、ハネムーン期から壁期の間は特にお酒にまつわる「楽しかった」思い出”だけ”を強化編集された状態で脳内ループ再生されます。
これらの理由から、飲酒欲求自体は緊張期よりも確実に弱くなっているにも関わらず、過信と虚しさから再飲酒をしてしまうというパターンが形成されるわけですね。
これらを打破するにはやはり、知識と情報の強化がうってつけ。
世間にはあなたと同じ状態を味わい、それを克服してきた経験のある人が大勢います。
そして、ありがたいことにその克服体験を書籍、ブログ、動画、SNSなど様々な媒体で発信、提供してくれているのです。
これら先人たちの体験談やアドバイスをこの時期はとにかく貪欲にかき集めましょう。
禁酒、断酒を進める上で、「知識と情報は最大の武器」となるのは間違いありません。
アルコール依存症を患っている人も、お酒の影響で「うつ」になる人が非常に多くいますが、逆にお酒をやめることで「うつ」に似た症状になることもあるのだから皮肉な話です。
ただ、忘れないでほしいのは飲酒による「うつ」と断酒による「うつ」には決定的な違いがあります。
飲酒による「うつ」には希望がありません。
飲酒を続ければ続けるほど症状は悪化の一途をたどります。
しかし、断酒による「うつ」は真逆です。
そもそも断酒による「うつ」は依存症の回復過程で起こる正常な反応なので、断酒を続けて行けば必ず改善します。
そしてこれらを乗り越えるためには様々な工夫をしていく必要があるのです。
とにかく「のんびり」を意識
「壁期」攻略のポイントも結局のところ「時間」です。
壁期は一般に断酒開始3ヶ月目〜6ヶ月過ぎまでの約3ヶ月間。
私の場合は壁期が来たのが約4ヶ月目、そして壁期特有の状態は大体断酒開始から8ヶ月過ぎるくらいまでありました。
足掛け4ヶ月程度といったところでしょうか。
回復するのも即座に回復するわけでは当然なく、徐々に気持ちが晴れてきて、気づいたら気持ちが楽になっていた感じです。
このへんは個人差があるため、壁期が全く無かった!という人から断酒開始一年過ぎるまで、壁期特有の心理状態だったという人など様々。
壁期に苦しもうが、平気であろうが時間は確実に過ぎていきます。
そして、アルコール依存症は時間の経過によってのみ回復する病でもあるのです。
なので、心構えとしては「焦りは禁物」というところに尽きるでしょう。
とにかく焦らず、成果を求めず、心理的ハードルを低く設定しておく必要があると思います。
お酒をやめる動機は人それぞれです。
多くの方が、何より私自身お酒をやめることで、脳をクリアにして時間を有効に使い、生産性を高め、生活を向上させたい!!といった強い願望があり、それが断酒のモチベーションや目標でもありました。
しかし、長年アルコールによって蝕まれた脳はそう簡単に取り戻せません。
うつっぽい気持ちになり、能動的になれず、生産性も上がらずに期待していた「成果」が得られない。そういったギャップに苦しめられる期間でもありました。
期待はずれ感から当然「もう飲んじゃおうかな」といった、迷いもありましたが、ここでやはり助けとなったのが先人たちによる「知識と情報」だったのです。
「何をしても良い」、「何もしなくても良い」
禁酒、断酒を上手く成功させて、2年3年と継続できている方たちがよく言うのは、
飲酒と犯罪以外「何をしても良い」し、逆に「何もしなくても良い」ということ。
前述の通り禁酒、断酒を始めるとアレもしたい、コレもしたいと欲が出てきます。
それ自体はとても良いことなのですが、何でも上手く出来るとは限りません。
私の場合はむしろ、上手くできずにギャップに悩むことになりました。
なので、考え方のベクトルをちょっと変えて緩くするのがちょうどいいと思っています。
どうしても動けないときは無理にアクティブになる必要は無いのです。
やる気がでないときは何もしなくても時間は過ぎていきます。
時間が過ぎることを焦るのではなく、時間の経過が自分をお酒の呪縛から解放させ、脳の機能を回復させていると納得させることが出来ればOKです。
また、「やる気」というのはただ、待っていても向こうからはやっては来ません。
小さな「行動」を一つ起こすことで徐々にやる気が内側から湧いてきます。
ランニングをする気が起こらないときは、とりあえず、部屋着のままでもいいので軽く表を散歩する。
外に出る気が起こらないときは、部屋着から外着に着替えてみる。
「やる気」というのは常に「行動」の後付でやって来るという心理システムを理解しておきましょう。
読書をしようと思っている人は、「今日中に一冊読み切るぞ」と意気込むのは逆効果。
かえって心理的なハードルが上がるので意識して下げましょう。
まず、読みやすくするためにすぐ手に取れる場所に置いておきます。
そして、目についたら「とりあえず」手に取る。
手に取ったら「とりあえず」1ページだけ読む。
この「とりあえず」がとても大事。
こうした「小さな行動」を「考えなくても出来る環境」に変化させていきましょう。
筋トレなども今日は腕立て何十回と腹筋何十回などではなく、「とりあえず」思いついたときに「10回だけやる」ぐらいでいいのです。
「思考」よりも「とりあえず」の「小さな行動」、コレを意識して軽い気持ちでやっていきましょう。
完璧を目指すのは絶対にやめて下さい。
10%でも出来れば上々!!ぐらいに緩く構えておくのがグッド。
意外といい散歩とドライブ、そして読書
私自身、断酒を始めてから大分能動的になり、色々新しい習慣を強化してきました。
ランニングに始まり、筋トレ、ブログ運営など。
ブログに紐付けて、画像提案型のSNS、Pinterestや、最近では断酒関連のTwitterなどもやっております。
正直どれも上手く回っているとは言い難いのですが、緩くてもいいので休み休み継続していこうと思っています。
ただ、そういった新しい習慣も壁期特有のうつっぽい心理状態が足かせになり、全然やれないときも多々ありました。というより今も良くあります。
そういうときは、先程言ったとおり、行動の達成目標を下げていきます。
私は住まいが海の近くなので、海岸までちんたら、お気に入りの音楽を聴きながら散歩をするのが好きです。
特に朝の散歩は様々な観点から多くのメリットがあります。
朝日を浴びることで、寝起きの体内時計がリセットされ、夜のホルモン、メラトニンモードから、朝のホルモン、セロトニンモードに切り替わります。
それにより脳が覚醒しテンションが上がります。
そして散歩による有酸素運動で、ドーパミンが分泌されて集中力ややる気が上がる効果も期待できます。
次にセロトニンは夜にメラトニンに変わり、スムーズな入眠を促して、良い生活サイクルを築いてくれるのです。
また、晴れた休日などは家に閉じ籠もっているとソワソワしてしまうので、車で小一時間程度、コレまた好きな音楽を流しながらドライブします。
沖縄はドライブスポットも多いので、行きたい場所に困ることもあまりありません。
場合によっては本島北部まで足を伸ばすこともあります。
当然ですが、お酒を一切飲んでいないので、いつでも好きなときに車で繰り出せますよね。
東京、大阪などの大都市にお住まいの方は電車でちょっと遠出したり、行ったことのない駅に行くのもいい気分転換になるのではないでしょうか。
先程いったようにたくさん読むぞと、意気込むのではなく「とりあえず」数ページ読んでみると、だんだんのめり込んで気づいたら1〜2時間読み耽ることも少なくありません。
ビジネス書などもいいですが、小説や漫画などもおすすめです。
今紹介したもの以外でも、ゲームや動画視聴など気負わず出来るものでも全然いいと思います。
確実なのは、お酒を飲んで過ごすより圧倒的に有意義な時間の過ごし方だと断言します。
なので、お酒を飲まない選択そのものが「最も賢明な判断」だと自覚しましょう。
しんどいのはいつまでも続かない、必ず楽になるときが来る!!
禁酒、断酒に限らず、ダイエットなり勉強なり何かを継続していくと必ず停滞する時期が訪れます。これをプラトー現象と言います。
プラトーとは「高原」という意味で、この時期は頑張ってもなかなか思う通りの成果が出ません。横ばいの状態が続き焦燥感だけが募ってしまいます。
しかし、実はこのプラトー現象こそが次のステージにステップアップするための準備期間なのです。
この時期を耐え抜いて継続していけば成長曲線はある時を堺に飛躍的に上昇すると言われています。
禁酒、断酒に関わらず何かを始めて上手く行かずに「もうダメだ」、「自分には出来ないんだ」と思う人は例外なくこのプラトー現象の渦中に居ます。
なのでここで諦めるのは本当に、もったいないことだということをご理解下さい。
諸説ありますが禁酒、断酒におけるプラトー現象は断酒開始から約2年程度続くと言われています。
「壁期を凌いでもまだ続くのか」とゲンナリするかもしれませんが、2年経過を機に思考力、気分の安定感、生産性などあらゆるものが大きく好転するとのこと。
そういう意味では私自身あと半年以上プラトー現象が続く見通し。
でも絶対に乗り越えたい!この先の景色を見たいと強く思っています!!
これまで紹介したとおり、「壁期」は行き詰まり感を感じやすくなっています。
ただ自分自身の精神状態をよく観察すると飲酒欲求自体は弱くなっているはずです。
アルコール依存症の人は一度お酒をやめた後、スリップ(再飲酒)してしまうと、病状が悪化して禁酒、断酒前よりも酒量が増えてしまうことが往々にしてあります。
私自身かつて何回か禁酒を始めて2〜3ヶ月飲まずに過ごせたのに、思ったよりお酒をやめた効果を実感できず、気持ちの虚しさから再飲酒してしまう失敗を何度も経験しています。
そして前述通りお定まりのパターンに陥って依存症が悪化するという苦い経験がありました。
失敗の原因は今ならはっきり理解できます。
それはアルコールや依存症、断酒に対する「無知」です。
繰り返しになりますが「知識や情報は最大の武器」、これだけは肝に銘じておきましょう。
禁酒や断酒を始めてまだ日が浅い人は冒頭の5つのフェーズがあるということ、再飲酒することにより依存症が悪化してしまう、こういったことを予習しておくことが、精神的な「備え」になるのです。
「壁期」の症状は人それぞれで、「壁期」を感じない羨ましい方もおられますが、私自身は「壁期」を体験できてよかったと思っています。
断酒という行為がいかに辛いのかを知ることができた以上に、それを乗り越えられた自身に対する自信はこれからの人生に一つの拠り所になるからです。
また壁期クリアの難易度、スリップした後の惨めさを知っていることが、私の心を更にお酒から離れさせてくれているのもまた事実。
これらは多くの依存症克服者たちが皆通ってきた道でもあります。
人によっては少し時間がかかる場合もあるかもしれませんが、お酒を飲まない日々をコツコツ積み重ねていけば、必ず報われます。
そしてお酒を止めて一年以上経った私が言えることは、断酒をして後悔をしている人はおそらく1人もいないという事。
飲酒時代は飲み過ぎた翌朝、「飲まなきゃ良かった」と後悔したことは何百回とありました。
しかし、飲まずに過ごして寝た翌朝「飲めばよかった」と後悔したことはただの一度もありません。
断酒は地味ですが、継続できれば自己肯定感と自己効力感を高め、後悔の少ない選択の人生を歩むことが出来るでしょう。