去る2021年5月下旬時点で2020年11月より開始した断酒から「200日」が経過しました。私自身の人生においてもお酒を嗜(たしな)むようになって以来、半年以上飲まなかったのは今回が初めてです。
前回の100日経過以降、私に起こった精神と身体の変化と効果を記事にしたいと思います。
結論から言うと最初の断酒開始から100日間ほどの大きな変化はありません。
しかし変化が小さい分、自身に起こる精神と身体の機微に気づきやすくなりました。
断酒期間が長くなると徐々に感受性が豊かになっていくのが自覚出来るようになります。
やはり来た「壁期」
断酒開始0日から14日目を「緊張期」、15日から90日目を「ハネムーン期」、そして91日から180日目を「壁期」というフェーズにそれぞれ移行すると言われています。
最初の「緊張機」は最も強い飲酒欲求と戦う試練の時期です。不眠に悩まされ、気持ちもざわついてしまい辛い思いをしますが、しばらくすると眠れるようになります。
次の「ハネムーン期」は睡眠が取れるようになり、飲酒していた頃の二日酔いがないスッキリした朝に爽快感と充実感を感じることの出来る時期。この時期に「壁期」を迎える準備や心構えが出来ているかどうかで次のフェーズ「壁期」の難易度が変わります。
そして鬼門の「壁期」。多くの禁酒、断酒者がこの時期に挫折します。
理由としては「ハネムーン期」に享受していた翌朝のスッキリ感が当たり前になり、禁酒、断酒のメリットを体感しづらくなるため。代わって飲酒時代のお酒の美味しかった味や楽しい思い出を振り返るようになり、逆に二日酔いの辛さや飲みすぎた罪悪感などを都合よく忘れてしまうのです。
更によくあるパターンが、数ヶ月飲まなかったため「もう自分は適正に飲めるのでは‥?」っと誘惑がよぎってしまったりします。
そのため自分だけが好きだったお酒を飲めずに、孤立感を味わいます。そして、その負の感情がじわじわと禁酒、断酒が無意味だと感じる様にしていきます。
それゆえ、飲酒欲求が強烈だった「緊張期」とは違う、虚無感や虚脱感を感じ、所謂「断酒うつ」になりがちです。最近はネットのおかげで情報の共有が進み「壁期」を感じないという、禁酒、断酒者が増えていますが、私の場合は「壁期」がありました。
断酒100日から200日の大部分はまさにこの「壁期」と過ごす日々になるのです。
とにかく焦らない、意識して「のんびり」
多くの禁酒、断酒者はお酒を止めることで、健康をGETし、生産性の大幅な向上を期待することでしょう。
この辺は個人差があるとしか言いようがなく、
年齢や性別、飲酒の年月や深度によってまちまちだと思います。
多くのスリップ(再飲酒)する方は、禁酒、断酒によって得られる「成果」が期待はずれと言う理由で飲んでしまうような気がします。
なのでこの時期、特に「壁期」を感じ「うつ」のような症状の自覚がある場合はとにかく焦らないこと。「まあ、こんなものか」とある程度冷静に受け止めることが大事です。
普通に考えて、これまでお酒に費やしてきた時間を鑑みた場合、半年やそこいらで飲まなかった頃、(未成年時代)の状態になるなんてことはあり得ません。人間は必ず老化するからです。
しかし、自身の内面を丁寧に観察すると、明らかな好転反応が見つかるはず。
そういった小さな、小さな変化に気づけるか否かが禁酒、断酒継続の分水嶺になるのです。
繰り返しますが肝心なのは「成果」を焦らないこと。敢えてのんびり過ごすように心がけましょう。運動などで気分転換をはかるのが最も非常に有効です。
なかなか運動する気も起こらない時は無理せず、ハードルの低い散歩やドライブ、読書などがおすすめ。サブスクの動画配信サービスで、海外ドラマをイッキ見するのもいいと思います。
大切なのは飲まない一日、一日の積み重ねが確実な「成果」だと認識しましょう。
中途覚醒はあるが、明らかに寝付きは良くなる
禁酒、断酒を始めたばかりの「緊張期」は眠れない日々が続き、辛い思いをしますよね。ひと晩中布団の中で寝返りをうって、「もう飲んじゃおうか」などという考えが頭をかすめますが、一週間も我慢すれば眠れるようになります。
しかし厄介なのが、眠れるようになってもなかなか熟睡出来るようにはなれないこと。
人は歳を取ると眠りが浅くなるといいますので、そういった私自身の加齢も原因なのかもしれません。
夜中に起きる所謂「中途覚醒」もよくあります。しかし、断酒初期の「緊張期」と明らかに違うのは、夜になると確実に眠くなります。
そして布団に入り就寝すると10分以内に入眠できるように「改善」しました。
私は寝るときもApple Watchを装着して、睡眠のログをとっています。毎朝スマホで睡眠の成績を確認しますと日を追うごとに深い眠り(ノンレム睡眠同等)が徐々に増えて改善の兆しが見られるようになってきてます。
睡眠一つをとってもなかなか思い通りの「成果」は得られませんが、ゆっくりと良くなっているのを認識できれば、断酒継続のモチベーションになります。
以前までは「深い睡眠」が1時間未満でしたが、ここ最近は平均で1時間以上、調子のいい時は2時間位記録するようになってきました。(理想は2時間半程度)Apple Watchの睡眠ログはあくまで気休めの「参考値」ですが、記録がいいと嬉しくなりますよね。
体感としてはランニングなどのワークアウトをした日は眠りが深い印象。
寝起きのすっきり感も日に日に上がってきている感じです。
良い変化はゆっくりと徐々に‥
精神的な例としては、車の運転などがそうです。
以前(飲酒時代)は運転がちょっと荒く、信号待ちを嫌う傾向があったよう。
別の車がちょっと強引に侵入するとムカついて舌打ちをしたりしていましたが、最近はあまり苛つかなくなりました。運転自体が丁寧になったような気がします。
生産性などに関しても、急に働き者になることは無いですが、後回しの癖が少し改善しました。
ズボラな性格はなかなか治りませんが、「しょうがない、やっておくか」と”とりあえず”軽く手をつけて、作業しているうちに集中力が増し、しっかりやり込むような感じでしょうか。
そしてここが重要ですが、そういった微妙な変化というのは、意識的に自身の内面と向き合わないとなかなか気づけません。そうした機微に気づけるようにするにはやはり、記録を取ることがおすすめです。
日記などを書くのもいいかもしれませんが、若干ハードルが高いような気もします。
私の場合は、カレンダーに日々の断酒記録と、ワークアウトを可視化出来るように印をつけたりすること。
他にはいつも持ち歩いている、メモ帳に「断酒備忘録」として、自身の心境の変化などについて書いたりします。具体的には断酒のモチベーションを保つために、これから何をしたいか、自分にどういう細かい変化が起こったのかを書いて残しておくなど。あとで振り返ると、ゆっくりと自分に改善の兆しが来ているのが確認できるようになります。
Twitterなどでつぶやいたり、私のようにブログを更新するなど新しい習慣を作るのも有効です。
あまり形式張って構えず、「続くといいな」くらいの感じで、休み休みやっても大丈夫ですよ。
「壁期」があってよかった
現在、断酒開始から200日以上が経過し世間で言う「壁期」を越えて「適応期(181~270日)」に入っています。
しかし、今も眠りが浅かったり、虚脱感に襲われ、モチベーションが上がらない、「壁期」特有の症状はあったりします。
しつこいようですが、やはり個人差があるため、「壁期」を感じない方もいれば、私のように半年過ぎても「うつ」っぽい状態が続く人もいるのです。
ただ、飲酒欲求自体は日に日に弱くなっており、強く「飲みたい!」と思う心理状態はまず無いです。なんとなくほんのり「あ〜、なんか飲みたいかも‥」くらいで、その感情もすぐに霧散します。
「うつ」っぽい状態も四六時中あるわけではなく、ふとした時にゲンナリした感情になる程度で、私の場合はあまり深刻な感じはしません。
体調的な面においても毎日飲酒していた頃と比較すると、比べ物にならないくらい改善しています。
飲んでいないので当然ですが、朝起きた時「二日酔いのあの最悪な感じ」を味わうことは一切ありません。
大抵目が覚めて、すぐに起きて行動ができるようになりますが、やはりたまにゲンナリして、能動的な気持ちになれない朝もあったりします。感覚的には一進一退を繰り返していますが、
俯瞰的に見ると確実に前進中です。
「壁期」の状態は人によっては深刻で何も出来なくなる人もいたりしますが、
私の場合は「壁期」があってよかったと思っています。
理由は自身の精神や身体の機微にしっかり向き合えるようなったから。
お酒を飲んでいた頃は酩酊して、そういったものから一切合切目を逸していたのです。
自身の内面に向き合うことで、意思ではなく環境や仕組みづくりで断酒を継続することが大事だと分かるようになりました。
更に向こうへ!Plus Ultra!!
禁酒、断酒の継続期間が続くことによって、思考や行動にも良い変化が訪れます。
これまでの、気持ち→行動、ではなくなります。まず行動して後から気持ちがついてくる、という習慣に変わるようになるのです。
「心の準備」を待つ必要はなく、何でもまず小さな”行動”から始めることで、ポジティブな”気持ち”に変化します。
最初は”歩く”くらいのエネルギーで始めるのです。
歩いているうちに身体が温まってきて、”走れる”ようになる。
最初は微弱だった集中力もだんだん大きく、強くなっていきます。そうすれば行動が意思に変わり継続するモチベーションが育ってくるということ。
「禁酒は明日から」ととにかく後回しにする考え方が、「何でもまず、やってみる」「やってみて駄目だったら、次を考える」というマインドセットに変わるのは結構大きな心境の変化と言えるのではないでしょうか。
ダイエットでもトレーニングでも、”意思”を待つのは時間の無駄。すぐ出来る小さな”行動”を「まず、やってみる」、上手く行かない時は、別の”行動”をとる。そういった、「トライアルアンドエラー」の繰り返しこそが、すべての基本と言えるのではないでしょうか。
そして私にとって飲酒という「行為」は、そういった、「行動」も「意思」も削いでしまうのです。断酒による好転反応はすぐには来ませんが、続けていけば、自身の中の小さな変化に気づけるようになります。
その「小さな気づき」こそが私にとっての大きな「成果」です。
「適応期(181~270日)」を過ぎると、次はいよいよ最後のステップである「解決期(271日〜365日)」へと移行します。ここまで行ければ、飲酒欲求はもう殆ど出てこなくなります。
最後に禁酒、断酒者が最初の1年を通して訪れる5つのフェーズをおさらいしてみましょう。
強い飲酒欲求と不眠との闘いが最も辛いと言われる、我慢を強いられる期間。
不眠が解消して眠れるようになり、体調が良くなっていき充実感が増す期間。
「断酒の鬼門」と言われる期間。
飲酒しない生活に慣れた事による虚無感や虚脱感などから再飲酒に走りやすい危険な時期。
退屈さにも段々と適応し、断酒に心身ともに身体が馴染んで来る時期。
お酒に対する執着が無くなり、身体の機能が回復して心身共に健康を感じられるようになる期間。
まずは最初の目標である「断酒1年」を目指してこれからも「頑張らず」に継続して、更に先を目指していきたいと思います。