禁酒、断酒を決めたら最初に読む本はやはり、世界的な名著であるアレン・カー氏の『禁酒セラピー』でしょう。
日本での初版は2002年で約20年に渡る超ロングセラー書籍です。
世界中の禁酒、断酒者に読まれ様々な書評の有るこの本は、私も数年前に購入して読みました。
結論から言うと、初見当時の私はこの本で禁酒、断酒は出来ませんでした。
しかし本書で語られる、お酒に関する知見や禁酒、断酒のためのメソッドなどは一読の価値が大いにあります。断酒生活が軌道に乗った最近に読み直したら改めて色々発見がありました。
アマゾンや楽天などのネットでも注文購入出来ますが、地域によっては届くのに数日かかります。大きな本屋さんに行けば大体置いてあるので断酒を決意したその日に書店に行って直接買うか、電子書籍などでダウンロードして、断酒を決めたその日にすぐ読むことをおすすめします。
お酒は「毒」であるという事実
最初は無理して飲んでいた
「毒」であるが故に、初めてお酒を口にしたときは不味くて飲めたものではないのに、あなたは我慢をしながら「毒」を飲み続け、いつの間にかその味にも慣れて酩酊感を味わえる様になっていきます。
そしていつしか酔いだけを求め、お酒に囚われ飲まずにいられなくなってしまいコントロール不能になる。
思えば私も二十歳前後のお酒を覚えたばかりの頃は「美味しい」とはあまり思えず、飲み会などでは無理をして飲んでいた記憶がありますが、あなたはどうでしょう。
徐々に麻痺してコントロールを失う
私自身20代の頃は毎日飲むこと様な事は決して無く、飲み会などでしか飲まない、所謂「機会飲酒者」でした。
しかし「毒」も長年取り込んでいくと「耐性」がついて、酔いを求めて一杯や二杯のお酒では満足できなくなり30歳を過ぎたくらいから、自身の飲酒に対し疑問を持ち始めていました。
実際は「耐性」がつくというよりは「毒」によって肝臓や脳にダメージが蓄積され徐々に体の機能が鈍くなって麻痺していき、その麻痺の感覚をもっと求めて酒量が増えていったような感覚でした。
まさに「中毒」です。
現在では医学的にもアルコールは毒物であると言う事が常識になっており、アルコールを摂取することで脳細胞が萎縮することも確認されています。だからこそ肝臓が「解毒」する訳です。
依存症の原因はあなたではなく、お酒そのもの
あなたは悪くない
かのような「毒」であるが故に本書ではアルコール依存症者は自身の責任で依存症になったのではないと述べます。
現在ではこの様な考え方は割と主流ですが、慧眼の筆者は20年近くも前から本書でそのように解説しており、お酒の問題で自分自身を責めることを明確に否定しています。
多くの方がお酒にまつわる失敗や失態が有ると思いますが(私も!)、アルコールそのものにその様な作用が予め備わっているため、アルコールを摂取し続ければいずれ誰の身にも問題が起こってしまうのは「自明の理」であり、その責任自体はお酒そのものにあって、人間にはありません。
行き過ぎた自責の念はかえってアルコール依存症を悪化させます。
あなた自身ではなく、アルコールを悪者にしちゃいましょう。
「毒」を取り続ければ破綻する
元々ストレスを除くために飲んでいたお酒が、結局翌朝の二日酔いや寝不足による体調不良などのストレス要因になり、それによって発生したストレスを払うためにまたお酒を飲むという悪循環。
お酒こそがストレスの原因そのものだという何よりの証明です。
そのような生活を繰り返していれば遅かれ早かれ誰しも必ず破綻します。
だからこそ自身の破滅を呼ぶお酒とは決別することが最も賢明で幸福な判断になるというわけですね。
お酒に対する先入観や幻想を取り払う
お酒が勇気をくれるは嘘
あなたはお酒に対してどの様なイメージをお持ちでしょうか。
大人同士の催しには必ずと言っていいほどお酒が付いてきます。
私自身はあまり社交的な人間ではないので、この様な人が多く集まりワイワイする空間が元々苦手です。
だからこそ「飲まなきゃやってられない」とばかりにお酒をあおっていました。
そうすることで、自身の内面のフタが外れて、知らない人やあまり親しくない人ともお喋りできるような感じでした。
だからこそお酒はイベントにはなくてはならない大事なアイテムで「お酒が無ければ楽しく無い」と思っていました。
お酒を必要としなかった頃
ここで思い出すべきはお酒を必要としていなかった頃。
つまり子供の頃はどんなイベント時でも飲酒はしなかったはずです。
当たり前だ!
しかし、子供はお酒の力などを借りずとも様々なことを大いに楽しむことができるのは何故でしょうか。
実は逆で、大人になったら「お酒が無ければ楽しく無い」のではなく、
お酒そのものが「楽しい」を奪っていたのではないのでしょうか。
本来楽しい出来事はお酒がなくても十分楽しいはずなのです。
イベントを彩るための脇役に過ぎないはずのお酒が、
メインに入れ替わっているため「お酒が無ければ楽しく無い」になっているのです。
お酒に依存すればするほどこの傾向は強くなりますので、パーティーなどイベントでお酒の有無があなたのテンションを左右するのであれば、程度の差こそあるのでしょうが、あなたはお酒に依存しています。
そして、それこそがお酒があなたにもたらす先入観と幻想なのです。
お酒があれば幸せなのか
お酒が本当に素晴らしいものならばアルコール依存症の人は「世界一幸福な人」のはずです。
しかし現実はアルコール依存症の人は「最も不幸な人」ではないのでしょうか少なくともお酒に溺れている人は自分をそう評価します。そしてそうさせたのは紛れもなくお酒なのです。
楽しい時間に彩りを与えてくれるアイテムのお酒、
それがいつしか飲酒の時間しか楽しくなくなるのは、
とても惨めではないでしょうか
禁酒、断酒に精神力は要らない
「我慢」がお酒の執着を生む
筆者のアレン・カー氏は本書のメソッドをしっかり理解していれば、
禁酒、断酒はとても楽だと断言しています。
また、精神力で禁酒、断酒を継続するのは困難で不幸なことだとも述べています。
「我慢」をするというのはそれだけお酒に囚われ、執着することに繋がるので頭の中が常にお酒を渇望し、結果的に苦しみ続けることになります。
禁酒、断酒で失うものはない
禁酒、断酒によるメリットや喜び、納得感を自身の中に落とし込むことが大事で、それさえできれば禁酒、断酒はラクで楽しいものになるのです。
そのためには前述にあるように、お酒に対する先入観や幻想をしっかりと見つめ直しましょう。
お酒がもたらす様々なメリットだと思えていた物が実はまがい物で、自身を苦しめる原因そのものだと言うことをどこまで自身の問題として理解できるかが大切です。
禁酒、断酒は決して苦しい修行などではなく、心と身体が「新しい自分」になり、お酒という呪縛からの「解放」であり「自由の獲得」なのです。
このマインドセットさえ持つことができれば禁酒、断酒は簡単だと解説されています。
節酒よりも禁酒、断酒が遥かに楽
禁酒、断酒起こる心と身体の変化
私もそうですが禁酒、断酒を始めて、しばらくのうち所謂「緊張期(初日〜14日)」の段階では、お酒がもたらす様々なデメリット、二日酔いや慢性的な寝不足感からくる体調不良などを鮮明に覚えているので、それらのデメリットを避けたい一心で継続することが出来ます。
そして「ハネムーン期(15日〜90日)」になれば睡眠不足からも開放され、それに伴い体調も良くなり、気持ちも高揚してきます。
ここまでは大抵の方は順調ですが、
そこからもう少し進んでくと所謂「壁期(90日〜180日)」に入り、
「自分はもう、適正に飲めるのではないか。昔(遥か昔、お酒を覚えたての頃)のように機会飲酒に戻れるのでは…?」という考えが芽生え「節酒」という選択肢を模索しようとします。
本書にも記述されていますが、お酒というものが厄介なのはそれが例え「幻想」でも楽しい思い出と紐付いているため「お酒があれば楽しいヨ!」と心の中の小悪魔が飲酒を囁いてきます。
しかし、そのような心持ちで再飲酒(これをスリップという)してしまいますと、
ほとんどの人が依存症に逆戻り…どころか!
止める前より酒量が増えてよりひどい依存状態に陥ります。
マジ最悪…
そういった多くの失敗談があるので、「自分だけはもう飲んでも大丈夫」と1mmの根拠もない理由で再飲酒してしまうのはとてももったいないことです。
「節酒」することでお酒に支配され続ける
私自身もかつては、「節酒」、「減酒」という道をいの一番に模索しました。
いわゆる「機会飲酒」というやつで、親戚身内の集まりや仲間との飲み会などの場でだけ飲み、そうゆう時と場所以外は飲まない、「家飲み」などはしないというアレです。
結論を言うと、そんなことが出来ていれば、そもそも禁酒や断酒など考えもしないし、
このようなブログも書いていませんよね〜(苦笑)。
仮に節酒するのにしても「今日はこれぐらいで…」とか、
「節酒するために今日は我慢我慢…」などと
自身を監視し、抑圧しながらこれからの長い人生を生きていくのと、
お酒の事などを考えずに…いや、「囚われず」に健やかな体と心で過ごす毎日はどちらが幸福でしょうか?
私は圧倒的に後者です。
そもそもお酒がコントロールできないからこそ飲酒に問題を抱える様になったという出発点を忘れないようにしましょう。
飲酒欲求、つまり「小悪魔の囁き声」は禁酒、断酒の期間が長くなっていき、お酒のない日々の喜びを積み重ねていくほどに弱く、か細くなっていきます。
だから、「節酒」よりも「禁酒、断酒」の方が圧倒的に楽なのです。
「断酒の我慢」は日を重ねるごとに小さくなっていきますが、
「節酒の我慢」は逆に日々大きくなっていきますよ、マジで…。
禁酒、断酒の最大の敵は「無知」
敵を知り己を知れば百戦殆うからず
何をするにしても情報と知識は大きな武器になりえます。
本書でも著者の体験談として語られていますが、禁酒、断酒の最大の敵はお酒に対する「無知」です。
禁酒、断酒を進めるにあたって、知るべきはアルコールの性質とお酒を断つことによって起こる自身の変化ではないでしょうか。
私自身以前禁酒、断酒したときはお酒を断つことによって起こる自身の心や体の変化に無知だったため、スリップしてしまいした。
禁酒、断酒で起こる『5つのフェーズ』と『HALT』
それが以下の通り。
- 緊張期(初日~14日)
- ハネムーン期(15日~90日)
- 壁期(91日~180日)
- 適応期(181日~270日)
- 解決期(271日~365日)
以上の5段階。
『HALT』とは
- Hungry(空腹)
- Angry(怒り)
- Lonely(孤独)
- Tired(疲労)
以上4つの頭文字でこれらの状況が再飲酒のトリガーになってしまうというものです。
これらはアルコール依存症を患った方たちが、禁酒、断酒を行った際、回復の過程で起こる反応です。
そういったものに対する心理的備えがあれば、慌てず対処することが出来るようになります。
『敵』の性質を熟知しておく
基本的なことですがアルコールには利尿作用が有るため飲むとトイレが近くなり体内の水分が失われます。つまり「飲めば飲むほどに喉が渇く」というとんでもない飲料なのです。
また強い依存性があり飲まなければ欠乏感を感じ、それを補うために飲酒をしますが、その飲酒が新たな欠乏感を生む原因となり「負のループ」が繰り返されます。
このようなマッチポンプを断つための禁酒、断酒なのだという原点を忘れずに居続けるのは意外と難しい様です。
数年間お酒を止めていた方でもスリップしてしまう様に、小悪魔は忘れた頃にあなたの心の隙間に入り込んで囁いてきます。断酒会などのコミュニティーもこのような油断と慢心を潰すための催しと言えます。
「意志」よりも「情報」と「戦略」
ですので常に自身の知識と情報をアップデートし続けることが、
健康を維持する喜びを再確認でき、且つお酒という厄介な「毒」を遠ざけることが出来るのだと思います。
お酒を意識するのでは無く禁酒、断酒によって手に入れた健やかな体と思考を大切にしていきましょう。
今はSNSやネットコミュニティなど、断酒をすすめるのに、誂向きなツールが沢山あります。
どんどん活用して、禁酒、断酒のメリットを共有していきましょう。
お酒をやめられた人は高評価、出来なかった人は低評価
読んで個々で判断するしかない
アマゾンや楽天などの商品レビューなどを見れば確認できると思いますが、この『禁酒セラピー』の評価は主に2つに分かれます。
この本を読んで「お酒をやめられた人」と「お酒をやめられなかった人」です。
当時の私を含め飲酒に対し問題意識を抱えている人が買うので当然と言えば当然ですが、
「お酒をやめられた人」からの評価は高く、
「お酒に対する考え方が変わり苦労せずやめられた」
など、概ねポジティブな評価が並びます。
そりゃそうだ
一方「お酒をやめられなかった人」からは低評価で、
「禁酒はそんなに甘いものではない」や
「この本はお酒に対する認識が浅い」
「読んでもやめられなかった、お金返せ」
などといった「恨み節」を書いている方もいる様です。
なんかかわいそう…
「先入観」捨てて読んで見る
かくいう私も最初に読んだ当時はやめることができませんでした。
この本も本格的に禁酒を始めて、100日を過ぎる頃までは本棚の隅に長らく鎮座して居りました。
やはり感じたことはこの本の冒頭にあるように「心を開く事」が肝要なのだと再確認しました。
心を開いて、お酒に対して自分がどうしたいのか、
お酒のない生活を心から求めているのかなど、
お酒を断つ意識がある程度整っていなければ効果は薄いと思われます。
しかし読むことで初めて、意識が整う方も多くいる様なので、やはり一度読んでみることが一番だと思う次第であります。私自身これから定期的に何度も読み返したいと思います。
まとめ.今読み返すと自分には良書
原因と結果
結論を述べると禁酒、断酒に対して「他責にしないで全て自分ごととして考える」ことが大事かと思います。
前述である、アルコール依存症は本人の責任では無く、
お酒そのものが悪いと述べたことと矛盾する様ですが、ちゃんと整合性はあります。
アルコール依存症という病魔自体はお酒によるもので、飲酒による問題は本人のせいでは無くお酒によってもたらされるものだと言う事、つまり飲酒によって起こる様々な問題の原因と犯人は人間ではなくお酒なのです。
一方で「お酒に頼らない、健康的で溌剌とした自由な人生」の意思選択は常に自身の中にあり、その決断に対して責任を持つのは自分しかいないということを、分けて考えることです。
「飲む」も「飲まない」も結局は自分のため
禁酒、断酒は誰かに言われてやるものでは無く(私自身の経験上それは不可能)、
自分自身が「お酒と決別した新しい人生を獲得したい!」と本気で思わなければ実行は出来ないのです。
その意思さえはっきりしていれば、『禁酒セラピー』は禁酒、断酒を行う上で様々なヒントや気づきを与えてくれる良書だと改めて感じました。
禁酒、断酒に限らず何かを始める上で、
万人に通用する完璧なメソッドというものは存在しないと私は考えます。
だからこそ、本やネットをはじめとする様々な知識や情報を可能な限り集め、必要であると感じれば、セミナーやコミニュティーなどを利用して見識を深めるなど、トライアルアンドエラーを繰り返し
最も自身に合った攻略法を構築することが大事だと思います。